2-71 磨き
磨き上げられた木製のカウンターの向こうに、おじさんが一人。こげ茶色の短髪は五分刈り気味で、白髪混じりの無精ひげが顎の辺りに散らばっている。大雑把に伸ばされている口ひげにも、白いものが混ざっていた。
「で、お前は?」
「はじめまして、ヨリコ・ブロッサムと申します」
濃いめの灰色の目が、真っ直ぐこちらに向けられていて、居心地が悪い。視線を落とすと、カウンターの木目が目に入った。
「こいつが、先生が言ってたやつか」
「そだよー」
鐘楼広場の南東側にある商業区の、奥まったところに、宝飾細工店、銅の板はあった。レインツリーさんに連れられてお店の中に入ると、仁王立ちをしたこのおじさんが待っていた。
「あら、先生、いらっしゃい」
「お邪魔してるよー」
カウンターの向こう側の、正面右にかかっているカーテンの中から、おばさんが顔を出した。
「あなたも、いらっしゃい」
にこやかに話しかけられたので、
「はじめまして、ヨリコ・ブロッサムと申します」
と、どうにか挨拶を返した。
「リカルド、座って頂いたら? ずっと、顔を見合わせて立ち話もおかしいでしょ」
「ああ。まぁ、座れ。先生もどうぞ」
カウンターの前に用意されている椅子の、右側の方に座ると、空いてる椅子にレインツリーさんも座った。おじさんも、カウンターの向こうにある、作業台っぽい机の前の椅子を引っ張ってきて、座った。
「じゃあ、私は上に戻るね」
「ああ」
私とレインツリーさんに丁寧な会釈をしてから、おばさんはカーテンの向こうに消えていった。とんとんとん、と、階段を上がっていくような音が聞こえている。




