2-70 そのへ
「そのへんは大丈夫。私がなんとかするから」
おぅ。
「でも、無理強いするつもりもないからね。ヨリちゃんが困ることは私もしたくないし。断ってもらっても全然いいから」
ぬーん。
「明日ですよね?」
「うん。ごめんね、急な話で」
「いえ、それは、明日はすることないので、全く問題ナッシングなんですけど」
うーむ。
「あのー」
「うん?」
「どんな服を着ていけばいいんですかね?」
「へ?」
「服です。私、この系統の服しか持っていないので」
スカートの裾を摘んで、放した。
この世界における、標準的な、女の普段着とされているもの。
「すごい方なんですよね? 普段着とかで行ったら、失礼に当たりませんですか」
レインツリーさんが、なんとも言えない顔をした。
「それは……大丈夫だよ? そういうことを気にするような奴ではないから」
「あ、そうなんですか」
断るための理由は、もうないな。
「では、えーと、明日はよろしくお願いします」
「うん。じゃあ、明日の十時頃に迎えに来るね」
「分かりましたです」
「じゃ、この話はここまでにしておいて……デザート、作ってきてるから。食べる?」
「食べます!」
「良い返事だねー」
「ほへへ」
細長いパンに、色々な果物のジャムを詰め込んだものを用意してくれているレインツリーさんから、ふと、視線を外して、夜空を見上げた。
星明かりの隙間の遠くに、白い月が浮かんでいるのが見える。星々が投げる華やかな輝きを縫って、怜悧な光が湖に突き刺さっている。
風に乗って届いてきた湖の匂いを、私は、命の匂いだ、と唐突に思った。




