2-59 十七
十七時三十分。空はまだ明るい。今日の空には朝から雲がなく、降る陽射しは大気に磨かれて鋭く、肌に当たってくるように思えたが、その鋭さは既に和らいでいる。太陽の眩さは、もう遠い。
眼奧を刺した光を瞬きで払い、振り返ると、まだ私に向かって手を振ってくれている、はなごろもの皆さんの姿が見えた。手を振り返したあと、どうぞ、お戻りくださいという、どじょうすくいの動きをアレンジした渾身のジェスチャーをしてから頭を下げる。私の思いが届いたのだろう、ようやく、皆さんはお店の中に戻るべく、路地の方へと歩いていった。
「不都合なことはございませんでしたか、ブロッサムさん」
皆さんが歩き去る姿に一礼をした、私の隣を歩く女の人が、優雅な言葉遣いで尋ねてきた。
「はい。皆さん、とても良くしてくださいました」
「そうでしたか。良いご経験をされたのですね」
「ですね」
背が高く、栗色の真っ直ぐな髪を少し高い位置でポニーテールにしているこの人は、転生者組合第三支部から派遣されてきた、ユーディ・ブライトンさん……で合ってるよな。
はじめましてのご挨拶は、はなごろもに私を迎えに来てくれた時にしただけだったので、もう一度、改めて。
「あのー、改めまして、なのですが。ヨリコ・ブロッサムと申します。よろしくお願い致します」
「ご丁寧にありがとうございます。改めまして、ユーディ・ブライトンです。転生者組合第三支部の職員をしております」
「受付のところに、スプリングフィールドさんと一緒にいらっしゃいましたよね?」
「はい」
微笑みながらブライトンさんが頷いた。言葉遣いも優雅なら、仕草も優雅な人だ。着ている服は私と同じようなものなのに。
「本来であれば、私ではなくグリーンリーフ主任がお迎えに上がる予定だったのですが、少し、立て込んでおりまして。申し訳ございません」
「いえいえいえ。今は、大変な時期なんですから」
グリーンリーフさん、主任なのか。
「ご配慮をありがとうございます」
「そんな、ほんとに。お気になさらず」
優雅さに気圧されて、若干、へこへこしている自分が情けない。
「第三支部にお戻りになられたあと、支部長の方からご説明させて頂くことになると思うのですが」




