2-57 両手
両手を胸の前でふりふりして、大丈夫ですアピールを思わずしてしまった。
おへー、ターナーさんがしゅんとしてる……。
んーむ、ここは何か、別の話題に切り替えて――そうだ!
「あの! ですね!」
元気爆発アピールをしつつ!
ターナーさんがびっくりした顔で、私を見た。
「二階の壁に飾ってある、髪留め、あるじゃないですか」
「二階の壁……ああ、あれね」
「素敵ですよね! シルヴァラ・レインツリーさんという方から伺ったんですけど、あのー……」
作った人のお名前、なんだっけかな。
ぬーん、むーん。
「あの髪留めは、リカルド・ルーペという宝飾師が作ったものなの」
あ、そうです、ルーペさんでした。
「もう、店じまいをしてしまっているから、新しい作品を見られないのが、なんだか、悲しくて飾ってるんだけど……そう、ブロッサムさん、レインツリー先生とお知り合いなのね」
レインツリーさんは、先生って呼ばれてるのか。
「お知り合いと言いますか……この世界のことを色々と教えて頂きまして」
「まぁ、そうなの」
良かった、とターナーさんが言った。
「気に入ってくれたんなら、飾って良かった。でもどうして、あの髪留めに興味を持ったの?」
「名字を決める時にですね、候補の一覧を見たんですけど、なかなか、これ、というのを思いつかなくて。気分転換でも、と思って、外の景色を見たんです」
ターナーさんが穏やかに頷いて、空になっていたお湯呑みに、お茶を注ぎ足してくれた。
「そうしたら、目の前には湖が広がっていて、馬車道に沿って桜が植えられていて、なんだか、きれいだなって思って、懐かしくなって」
で、ぴきーん、ときまして。
「桜。お花。あ、私の名字はブロッサムだ、と」
「そうなの」
疑問形ではなく、優しい言い方の肯定的な、そうなの、がターナーさんから返ってきた。




