第69話 両親への挨拶(5)
「う~ん、まあ、一樹は一国の皇帝陛下だし、国を統治するために色々なしがらみがあるのは、私でもわかることだから、妃が多いことに関しては、私も仕方がないと諦めるけれど……。それでも私、後宮で誰かの後に従うとかは嫌だからね、一樹! 私自身も魔王を後少しまで追い詰めたルミネス王国の大将軍で勇者なのだから、いやよ! 一樹!」
エルは向こうの世界にいる気高い、生意気な、《《アイツ》》の下につき、御機嫌伺をする毎日はいやだと僕にハッキリと拒否をしてきたから。
「う、うん、わかっている。わかっているよ、エル……。その辺は俺自身も無い頭で色々思案をしたから大丈夫だって、あっ、はははははは」
僕は助手席で可愛く頬を膨らませながら、不貞腐れているエルの御機嫌をとりつつ、アイツの下につくようなことがない策の方はちゃんと思案して用意をしていると告げた。
「そうなの?」
「うん、そう」
「その、策大丈夫そう?」
エルが頷く僕に再度確認をしてきたから。
「うん、大丈夫! 俺に任せろ!」と。
僕は満身の笑みを浮かべ、自分の胸を叩くと。
「──じゃ、エル! ここまま《《時空転移魔法》》を使用するから」と告げ、確認をとれば。
「本当に一樹、このままいっちゃうの? 私の故郷に?」
エルはまた困惑した表情で僕に告げてくるけれど。
「──OH~! YEAH~! 当たり前~!」と陽気に叫ぶと。
僕は魔法の詠唱を唱え、エルと元仕事のパートナーだったマツダのボンゴフルエアロカスタム、外見だけバーニング仕様と共に異世界……。
そうもう一人の僕……。魔王サタノ・アールが居た世界……。エルの産まれ育った屋敷の庭へと異世界転移ジャンプをおこなうのだ。
アイツ……。女王レビィアの奴が部下達……。メイド部隊と僕の魔力を悟る蜘蛛の網を張っているとも知らずにジャンプをしてしまうのだった。
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