第4話 小さなお姫様(16)
「それに私の夫をどうしようが、他人の貴女には関係の無いことでしょう?」
エルは沙也加のことを睨みながら荒々しく告げる。
だから沙也加の奴も「あぁ~」と唸りつつ、エルのことを睨みながら立ち上がるから。
「ちょ、ちょっと待ってエルさん!」と。
「沙也加先輩も辞めてください。小さな子供の前ですから。親が他人と喧嘩をしたらいけません。子供が悲しむから……」
美紀の奴が大変に悲しそうな顔……。そうアイツは妖狐へと暴力を振るう前の夫から、娘を守るために自分の身体を挺して守ったのだろう? それを幼い妖狐が見ては泣く、地獄絵図のような日々だったに違いない。
だから美紀は自分の経験談も含めて珍しく、自分が一番苦手としている沙也加へと食ってかかるから。
「美紀……」
沙也加はアイツの名を呼びつつ、エルとのガンのつけ合い、飛ばし合いを辞める。
「美紀ちゃんごめんね……」
エルは美紀と妖狐が俺達と暮す前の事情を知っているから謝罪をした。
「うわぁ~、ん、うわぁ~、ん」
エルが美紀へと謝罪をすれば赤ん坊の泣き声が急に……。




