第56話 エルフな、きよしこの夜(37)
「えっ! うち?」と、美紀さんが。自身を指さし告げれば。
「ああ、そうだ美紀。お前先程から妙に大人しくしているが。お前も俺の、亜人族の王の妃、女王の一人なのだから自分の思いや、言いたいこと。したいと思うことや。こうすればいいのではないか? と。俺やエル、翔子に遠慮しないで告げる方がいい。お前は昔から何でも我慢をして笑い誤魔化し耐え忍ぶと言う悪い癖があるからな」と。
魔王は先程も、美紀さんへと告げていたのだが、美紀さんが数年前に一樹と逢い。交際をしていた頃の記憶もあると告げていたぐらいだから。彼女の引っ込み思案、遠慮がちなところを指摘して、自分の意志や思いをちゃんと告げるようにと諫めれば。
「うん、そうだね」と、美紀さんは頷いた。
「でもね、一君? うちはね。このまま皆を。家族を支える。サポートして回る裏方でいいんだよ。うちはね」と、美紀さんが優しく微笑みながら魔王へと告げれば。
「そうか」と魔王は、それ以上の言葉を美紀さんへ告げずに。その後は彼女の頭の上へと優しく手を乗せて、撫で始め。労い始めるのだ。
それも美紀さんの事を大変に優しく。愛しく見詰めながら撫で続けるのだった。
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