第56話 エルフな、きよしこの夜(15)
「うぅ、うううっ」
「起きた?」
「……ん? あっ! ああ、起きた。起きた……」
「そう、大丈夫? 大丈夫なの、一樹……。じゃ、ないわね。あなた……。魔力がある。高いようだから。もしかして一樹ではなく。魔王なの? 魔王なのかな、あなたは?」と。
私が自身の膝の上に頭を載せる主、夫である筈の一樹に、微笑みかけながら《《魔王》》なのか? と、尋ねてみたのだ。
「えぇえええっ! 嘘ぉおおおっ! 一樹が魔王ってぇえええっ⁉」
「そ、そうよ。翔子さんの言う通りで、エルさん! エルさんの膝の上で横たわる一君が、魔王って一体どう言う事なの? エルさん! 私は意味がわからないよ?」と。
私の膝の上で横たわる《《魔王》》……と、言っても。以前にも私が何度も一樹本人に説明した通りで。《《魔王》》と私の主、夫である一樹は同一人物だから。いくら翔子さんと美紀さんの二人に驚愕しながら問われても『一樹だよ』と、告げる事しかできないから。私はそれを、その事を、二人へと口を開き説明をしようとした。
「翔子ママとママ~! そんなに驚かないで! ビックリしないでよ! いくら魔力が高くなっていてもパパは、パパ~! 洋子のパパで間違いがないのだから。そんなに驚かないで二人とも……。だから洋子は、こんなにも、普通の人達と違って魔力が高い。高いのは、洋子がパパの子供で間違いないと言う意味だから。エルママの膝の上に頭を乗せ転がったいるのは、洋子達のパパで間違いないのだから。ママ達二人もそんなにパパに驚かないでよ。お願いだから。頼むから」と。




