第56話 エルフな、きよしこの夜(4)
……だけではなくてね。
「エルママの声。歌声。本当に綺麗、綺麗だね。パパ~。ママ達~」と。
我が家のお姫様もエルの歌声──《《きよしこの夜》》を聞いて歓喜、絶賛をする。しながら。家族で和気藹々寄り添いながらエルの奏でる歌に酔いしれ堪能……。クリスマスイブの夜を満喫していたらね。
〈ズルズル〉
〈トコトコ〉
〈タンタン〉
〈ギシ、ギシ〉
〈ザッ、ザッ〉
〈ザクザク〉
と、足音多々……。
それも? 色々な者達、種類の者達の足音が聞こえてくるのだ。
この冬場、クリスマスイブの夜なのにね。冬場の中国山地の頂上付近のこの山間部で、冬眠次期に入っている筈の獣達が、我が家の筆頭奥様、エルの天女、女神、天子の歌声を聴き、冬眠から目覚めたのか? 虫、爬虫類、鳥類から哺乳類……。
特に中国山地には多々いる大型哺乳動物迄……。
そう、鹿や猪。そして月の輪熊迄出てきた。出現、現れてこちらへと向かってくるから。流石に僕もビックリ! 仰天! 「えっ! ウソ!」と、声を漏らせば。
「えっ! な、何あれ?」
「か、一君! ど、どうしよう? 猪と熊がこっちに向かってきているよ! ど、どうしよう?」と。
翔子と美紀の二人が、自身の両目、瞼を大きく開けながら仲良く、驚嘆を漏らす。
それも、震え慄きながら漏らせばね。




