第30話 目覚めてみると? (1)
「チュン、チュン」
「チュン、チュン、チュン」
……ん? あれ? 鳥のさえずりが聞こえる……。
彼女! 金星人さんは意識が戻ると言うか? 朝目を覚まし、最初に思ったらしい。
そして彼女が次に思ったことは。
う~ん、それにしても朝日が眩しいな……と、金星人さんは自分の瞼を開け──! 台所の窓から入る朝日を自分の麗しい顔に浴びたから不快に思ったみたい。
でッ、次に彼女が思ったことは見慣れない天井の造りと昭和の時代らしい洒落っ気も無い、四角い和式のプラスチック製の蛍光灯を見ても。彼女が初めて見る蝋燭を使用していない明りを灯す器具だから、金星人さんは狼狽してしまい。
ここは何処? 一体何処なの? と、自分の顔を蒼白させながら思ったみたいでね。次に彼女が可笑しいと思ったのは部屋の外から聞こえる人間達の声と自動車・バイクの怪音を聞き。
……部屋の外から子供達の声がするのに変な音……。私が初めて耳にする異常音……。怪音が聞こえてくるけれど……。ここは魔王城の中の牢獄の一つなのだろうか? と思う。
しかし金星人さんは直ぐに違う物にも気がつき。
あれ、でも? 変わったシーツ……。それもちょっと厚みのあるシーツだけれど。私が自分の屋敷で使用している物よりもふんわりとしているし、肌触りもいいな……と。
金星人さんは少しばかり機嫌もよろしくなりながら思うだけれど。彼女は更に自分の異変に気がついてしまう。
……わ、私、甲冑や下着を着衣していない裸……。産まれたままの姿じゃない……と、金星人さんは超狼狽しながら……。
それも己の歯がガタガタと嚙み合わないぐらい震え、怯えながら思ったらしいよ。
となれば?
彼女の脳裏で思い、察することは?
自分は別の星の敵に敗北して複数の兵士から凌辱行為を受けた……と言いたいところだけれど。
彼女は別の星の女性ではなく、僕達が住み暮らす世界とは次元の違う世界から強制的に転移させられて勇者さまだから、彼女が昨夜対峙して争っていた魔王に凌辱されたと勘違いをしたみたいだから。
やっとここで金髪碧眼の精霊勇者さまの口から。
「うぅ、ううう」と声が漏れる……。
そう彼女は魔王と呼ばれる者に乙女の貞操を奪われたと大勘違いをしているから「しくしく」と小声で嗚咽漏らし泣き始めるけれど。
しかし彼女の真横で「すぅ、すぅ」と静かな寝息……。
それも僕の大変に御満足……。幸せそうな寝顔と寝息……。
そして僕の口から更に言葉が漏れる。
「エル、幸せにするからね……」
僕は大変に幸せそうな寝言を漏らしつつ彼女……。エルフの勇者エルに抱きついて、彼女に甘えるから。




