第55話 クリスマスイブの夜(7)
「うん、そうでしょう。ママ……。だから洋子は嬉しいの」と。
家の小さなお姫様は、実の母に対して、「ふっ、ふふっ」と、鼻で笑う。
そう、大人の女性のように薄ら笑いを浮かべ漏らしながら告げるものだから美紀の奴は、『キィー!』だ。『キッキ』と、お猿さんのように真っ赤な顔をしながら地団駄。
「洋子ー! ママと! ママと今直ぐ変わりなさい! それと? ママにパパを返して今直ぐにー!」と。
美紀の奴はところかまわず声を大にして叫び始めると、言うか?
この大変に静かな雰囲気……。
中国山地に囲まれた山間にある森林公園内の駐車場で、今日の日の。この日のムード。クリスマスイブの夜の静かな雰囲気を醸し出している森林公園内の雰囲気、ムードを壊す。破壊をするような叫び声──木霊するぐらいの叫び声を吐く、放っても。
「いいや。だめ……。パパは洋子のものだから。ママにはあげない。あげないから」と。
我が家の小さなお姫様は、父親の俺の胸に頬ずり、甘えながら漏らすから。
それを見て確認をした美紀は、更に『キッキ! キッキ!』と、甲高い声──お猿さんのように地団駄を踏み。暴れながら。美紀は不満を吐き、放ち続けながら洋子との親子喧嘩を続けるものだから。
僕は本当に美紀の事を仕方のない奴だと思いながらも。今日はクリスマスイブの夜だからね。
「……美紀ー!。いつまでも洋子の文句は言わんでえぇから。早ぅ。こっちにこい。美紀お前のことも抱っこしてやるからぁっ!」と。
僕は御機嫌斜めな美紀、自身の妻へと、御機嫌窺いをするように手招きしながら呼び、誘うのだった。
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