第29話 ちょっと起こしてみますね(3)
「お~い、君?」、「起きてよ、君!」、「君! 君!」、「起きてくれるかな、君!」と。
僕は金星人さんから驚愕するような大胆な行動! 行為! を受けた……。
そう僕の眼下で相変わらずスヤスヤとお眠、眠、眠……と気持ちよさそうに本当になているのか、金星人は? と。
僕がジト目で冷たく、猜疑心を募らせている彼女を気だるげに呼びながら、鋼の甲冑越しだから、本当に力強く……。金星人さんが着衣している鋼の甲冑から。
《ギシギシ》
と金属同士が擦れる音がするくらい強く揺すりながら起こしてみたけど。彼女から漏れる言葉は、農協の購買部の駐車場と未だ変わらぬ。
「ムニャムニャ」と唇を動かし。
「スゥ、スゥ」と気持ちよさそうに寝てる? と言うか、金星人は狸寝入りで本当は起きているのではないか? と僕自身も思うところがるから。
「ちょっと、君!」、「君だよ! 君!」、「早く、起きてくれるかな!」、「このまま寝たふり、狸寝入りをしていると僕が担いで部屋に入るけれど。それでもいいのかい?」
僕は金星人さんを起こすのに今度は少しばかり荒々しく、重たい口調で彼女の柔らかい頬をツンツンと自分の人差し指で突きつつ強気で起こしてみた。
しかし金星人さんの口からは相変わらず。
「うぅ~、ん」、「うぅ~、ん」と艶やかな呻り声と。
「スゥ、スゥ」と寝息が漏れるだけだ、ならばいいけれど。
金星人さんの麗しい顔を『外国のセレブのように麗しいひとだな』と思いつつ覗き込み──。魅入り、見惚れながらも彼女の頬を突く悪戯、悪態行為をしている僕にいきなり抱きついてきた!
でッ、その後はよくあるラブコメの物語のテンプレ通りにキス魔の彼女は、僕との初めての接吻を無意識におこなったみたいだから。
僕は致し方がなく、唇を金星人さんに奪われ、多分生気を吸われているのだろうな? と思いつつも、鋼の甲冑身に纏う、重量のある彼女を何故かいとも簡単に持ちあげ──。お姫さま抱っこ……。
そのまま慌てて金星人さんを自分の部屋へと連れて帰るのだった。
◇◇◇




