第55話 クリスマスイブの夜(2)
「本当に、本当? 美紀さん、本当なの? ひくっ、ひくっ」と。
泣き癖がついた翔子が、自身の目を、瞳を、相変わらず濡らしながら問えば。
「うん。本当に、本当じゃけぇ」と。
美紀が頷きながら言葉を返せば。
「やったぁっ! やったぁっ! 良かったぁっ! 有難う、美紀さん」と。
今迄鳴いていたカラスがもう笑うではないが。美紀の言葉、話しを聞く迄は、幼子のように我儘、寝くじを漏らすように、シクシクと泣いていた翔子なのだが。
今僕達家族が向かう場所。その帰り。帰宅の途の最中には、じゃんけんでエルの次、二番目に勝利をして、僕の横の席──助手席の位置を確保していた美紀が、子供染みている翔子に対して、小さな子をなだめるような口調、物言いで告げれば。
翔子はこの通りで大喜び、歓喜、歓声を上げるのだが。
そんな、小さな娘のようにはしゃぐ、翔子の事を、真横に座る娘の洋子は凝視しながら。
「翔子ママ、良かったね」と。
微笑みながら告げれば。
「うん。良かったよ。洋子ちゃん。ママは本当に嬉しいけぇ」と。




