第51話 娘の魔法に驚愕! (1)
「あのね、翔子さん?」
「……ん? 何、エルさん?」
「一樹はね、この世界では只の人。人種の男性なのだけれど。私の世界にいるもう一人の一樹は、亜人族の王。魔王なのよ。翔子さん……。だからね。私達も何故、向こうの世界の一樹の遺伝がこの世界に出るのか迄はね。私も一樹も……。そして洋子ちゃんを産んだ美紀さんにも解らないし。そうかと言って? 只今妊娠中の翔子さんにも。自身のお腹にいる子供が何故、魔力が高いのか解らないのと一緒の事なの……」と。
エル自身も大変に困った声色で、翔子へと説明をするのだが。
やはり翔子は納得ができないようで、俯きながら。
「う~ん、それでも、私は納得がいく説明が欲しい……」
と、告げてくる。
だから僕は翔子から洋子へと視線を変え。
「洋子?」
「……ん? 何、パパ?」
「洋子の目の前にいるお姉ちゃんに。洋子の指先から小さな火が灯せる魔法を見してあげぇれんかのぅ?」
僕が優しく洋子へと尋ねれば。
「うん、いいよ。パパ。じゃ、今から洋子するからね」と。
家の長女、お嬢様は、大変に嬉しそうな声音で言葉を漏らしながら、自身の指先から。
〈ポッ!〉だ。
〈ポッ!〉と。
洋子は自身の小さな指先から炎を出し、灯しながら、自身の目の前に座る翔子へと、小さな炎の灯火──メラメラと燃える様を見せる。




