第37話 えっ! また! 嘘でしょう? (1)
小さな洋子ちゃんの、小さな紅葉のようは掌を、自身の左手で握り締めながら美紀は俯き加減で、エルへと嘆いたのだ。
自身の夫が、他所に、他に、好きな人を作り、自宅……。
本来ならば、美紀と洋子茶ちゃんと旦那様とで家族団欒。
仲良く三人で暮らす筈の2LDKのマンションに、美紀の夫が二人を置き去りしてほとんど言って良い程、帰宅の途についてくれないのだと。
だから娘の洋子ちゃんと二人で寂しく暮らしているのだと。
美紀が自身の両目を潤いさせ、目尻を濡らし、透明の粒を点々と落としながら元勇者で将軍さま、伯爵令嬢でもあった姉貴肌の強いエルさまに愚痴と嘆き。
今後親子二人……。
小さな洋子ちゃんを育てながら暮らしていく。
その事に対して不安、前途多難なのだと美紀はエルに説明をしたのだ。
でっ、し終えれば。
真横に小さな洋子ちゃんが立ち並んでいようがお構いなしに、美紀は天を仰ぎ、仰ぎ続けながら。
「わぁ、あああん! わぁ、あああっ! どうしよう、エルさん? どうしたらいいの? いいと思う?」と。
大きく泣き叫びながらエルに告げてくるものだから。
「私に言われても二人の事。夫婦間の事だから。私は何にも言えないし。言える義理でもないから。理香さんの両親と、旦那様の両親を交えて話しをしたらどう?」と。
エルは大変に困った顔で、泣き叫ぶ美紀へと説明するのだ。
まあ、実際、今のエルの心の中の心境は、他人の事を心配、考慮、危惧してあげる程の、心の余裕はないのだよ。




