第30話 見間違えだろう? (4)
「ふぅ~ん。そうなん? まあ、ええわ。あの外人の娘が飛んだか、飛んでいないかは、うちはどうでもええけぇ。どのみち検査が終えたら。あの娘と話しをさせてもらうけぇ、うちは……。じゃねぇ、バイバイ一樹~。うちは仕事に戻るけぇ」と。
翔子は僕に手を振りながらスーパーマーケットのバックヤードへと向けて歩き出したのだ。
だから僕は、お尻をフリフリ歩く、翔子の背に対して、大変に情けない声音を漏らしてしまうのだ。
「翔子、どうしよう?」と。
でも彼女は、後ろを振り返る事もしないまま。
「うちは知らんよ。自分で考えぇ。うちが一樹の所に行くまでには、ちゃんと二人で話し、相談だけはしとってねぇ。お願いじゃけぇ」
とだけしか、告げてくれない。
くれないのだ。
翔子の奴はね。
そう、こんな切ない台詞しか、翔子は僕に告げてはくれないのだった。
だからどうしようと悩む僕は、その後も仕事。
販売に集中する事が出来ずに。
その日は店長さんに告げて、早々に販売の仕事を打ち切り、片づけ。
早目の帰宅の途につくのだった。
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