第27話 エルフな奥さまは大憤怒! (1)
「……どうも、こうも無いわよ。一樹ー! いや、魔王ぉっ! 一体どう言う事? 魔王、今直ぐ説明をしてちょうだい! 私もあなたの説明次第によっては、魔王を殺して、私も今度は前とは違って自害をするつもりだから」と。
エルはボンゴの扉を開けたまま前のり、憤怒しながら、俯いて気落ちをしている僕の髪を強引に上へと上げ。
死んだ魚のような僕の瞳を睨み据えながら問いかけてくるのだ。
でも、僕自身も、皆さんも知っている通りで、エルを騙した訳ではなく。
翔子から今日初めて、今聞かされた大事件、事実だから。
家の奥さまに対して、何と説明をすればわからない。
だから僕がエルから強引に頭を上げさせられて問われても。
僕は死んだ魚のような目を反らす事しか出来ないのだ。
でっ、そんな情けない様子の僕に我慢が出来なくなったのか、エルはね。
僕の顔の正面──。
もう、それこそ、キス、チュと言う奴が出来そうなくらい顔を近づけ、迫りながら。
「魔王ー! あなたは確か? 妻の私に対して、彼女も、妻も、子供もいないと。以前私に説明をしてくれたわよね! なのに、どう言う事なの? 彼女なら未だしも! 妻、奥さんが居て。彼女のお腹の中に赤ちゃんが居るとは、どう言う事なの? 今直ぐ説明をしなさい! さぁ、早く! 早くー!」と。
エルは夫の僕の事をまた、意味不明な名前、【魔王】と、呼びながら。
今直ぐ僕に翔子との関係を、説明をしろ!
翔子のお腹に僕の子がいるのは、どう言う事なのか?
説明をするようにと急かすのだが。
僕は自身の脳裏で何度も呟き、囁き、嘆いた通りだ。
また、それしか僕は、エルに伝える事しかできない。
「……本当に知らないんだよ。僕は……。翔子とだってもう、とうに自然消滅。別れたと僕人は思っていたし。お腹に子供がいるのも、今の今初めて翔子に聞かされた事だから知らないのだよ。僕自身は本当に……」
と、だけ、僕は答えるのが精一杯だった。




