第20話 エルフな勇者さまは、義父、義母へと挨拶します(1)
「本当に一樹は、魔王なのだから」、(プン、プン)と。
御機嫌斜めな、僕の元勇者な妻エルなのだよ。
そう、今の今迄、蛇女に妖艶に微笑を浮かべ、睨まれていた蛙君状態だった僕を、強引に家の奥さまは、二の腕を引っ張り連行──。相変わらず僕が聞いてもよくわからない言葉、単語。【魔王】と、言う名の想像、架空の中の人物の名を呼び、不満を漏らしながら玄関先──。
そして玄関中へと連れ込み、美紀の視界から僕を隠し、そして終えれば、『プンプン』と、苛立った顔を隠せない。僕へと不満のある顔で睨みつけてくるから。
「ごめんなさい」とだけ。俯きながらエルへと謝罪をおこなえば。僕の可愛いエルフな奥さまは、自身のシャープで細い顎を『クイ、クイ』と、突き出しながら。早く玄関から室内へと入り。自分のことを妻として早く紹介をしろと、姉さん女房。勇者女房らしい勇んだ勢いある姿勢と容姿、様子を無言の言葉で僕へと告げてくるから。僕は直ぐに自身の俯いた頭をあげて、コクリと頷き。
「あがるね~」と。
家の親父とお袋へと言葉を放ち、告げると。自身が履く靴を脱ぎ廊下へとあがる。
するとエルは、夫である僕につられるように、自身が履く。小さな女性用のサンダル。僕達があの頃、昭和の終わが近づく頃に、ツレ、仲間内で、【ピンヒール】と、呼んでいた。妙に踵から。大袈裟過ぎるほど、『カラン、カラン』と、音を出る、鳴る。ヤンキー御用達のサンダルを脱ぎ。
「お邪魔します」と、声を漏らしながら僕の前へと立ち並ぶのだ。
だから僕は、不機嫌極まりない顔、様子をしているエルへと「いこうか?」と、告げてみたのだ。
「うん」
でもこの通りで、僕のエルフな奥さまは廊下に上がる。入るとね。直ぐに御機嫌を直してくれたから僕は、『ふぅ』と、胸をなでおろし安堵するのだ。
(よかった。よかった)と思いつつ。
「フフフ」
まあ、僕の奥さまは、瞬時に僕が思う。考えること。思案をすることは、全部わかる。了承済みだから。御機嫌の方も段々良好だから。こんな感じで、天女の笑みを浮かべてくれた。
そんなエルの勇者らしくない華奢な掌を優しく握り。僕は両親がいる居間へと向かったのだ。
でっ、居間の前まで着くと、扉が開いているのに気が付き、中を。室内を覗いてみれば。僕は両親と目が直ぐに合う。
「紹介するね。僕の妻で。名前がエル」と。告げたところで。
「よろしくお願いします。お父様、お母様」と。




