第12話 何故、物の怪でもないのに鋼の甲冑を身に纏う?(1)
「えっ、ど、どう言うこと?」、「どう言うことなの?」
僕は物の怪さまに背後から抱きつかれ、彼女の「はぁ、はぁ」と白い息遣いと息の温かさを自分の耳や首で感じた。
だから僕は地面に倒れたままの姿ではいるけれど、僕の背に抱きついたまま、相変わらず「水をください」と嘆願してくる、落ち武者の姫武将さまに抗う行為を辞め。今の僕は狼狽している状態だけれど。
僕自身も少しばかり狼狽しながら、己の頭を抱え思案をすれば。僕の背に抱きついている女性は悪霊! 怨霊! 地縛霊ではなく! まだ生ある人間なのでは? と思ってしまうから。
僕はゆるり、ゆっくりと自分の両腕の肘──両足の膝を使用して、僕の背に抱きつく鎧武者仕様の彼女を背負ったまま四つん這いになるよう努力を始める。
「1・2・3・4……」、「5・6・7・8……」
と、僕は何故か数を数えながら両腕、両足へと力を入れていき──四つん這いへとなれば。
「9・10……」
僕はまた呟きつつ、自分の腰と上半身に力を入れ、僕の首の回っている落ち武者──。姫武将さまの物々しい、甲冑装備の腕を僕の両腕の手で掴んで、彼女が後ろへとひっくり返り、後頭部を打たないように細心の注意を払いながら。僕は自分の上半身を起こした。
すると僕の背の彼女は予想通りに、力無くだらりと地面に崩れ落ちそうになるけれど。
僕が落ち武者の姫武将さまの両腕を強く握っていることで彼女は地面に崩れ落ちるのを免れた。
だから僕はほっと安堵……。自分の胸を撫でおろせば。
(さて、これから、どうしよう?)
僕は思えば、ふとあるものが気になり、見詰めてしまう。
「あっ!」
僕は《《あるもの》》を見詰めて驚嘆をしてしまう。
だって僕の背後の落ち武者の姫武将さまが装着している甲冑の腕宛は和式の黒い甲冑の腕宛ではなく、金色に輝く洋式かな? 中世の時代で言う《《南蛮式》》の腕宛のように見えるから。
(えっ! 僕の背後にしな垂れている女性は日本人ではないの?)
僕がこんなことを思えば。落ち武者の姫武将さまの金色の長い髪が僕の瞳に写り、誘惑するから。
僕は慌てて後ろを振り返る。
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