第10話 出た~、お化け~! (1)
う~ん、さてさて、どうしようか? 僕の背後に迫る姫武将が落ち武者になって悪霊化! 地縛霊! と化した者が。先ほどから僕の背後へと更に迫ってきて、自分の耳へと。
「あぁ、ああああああ」、「うっ、ううう」
と呻り声や。
《ズルズル》
と、御自身が握っている《《あれ》》だと思う、凶悪な物……。
そう鋭い刃を持つ刀か槍を地面に当て──引きずりながら、僕のもう傍まで近づいているから畏怖して仕方がない。
しかし僕の背後に迫る姫武将さまの口からは、
「ああ、た、助けて……」と。
「み、水をください……。誰でも良いから……」
と言った言葉も滝時漏れるから、僕は生きた心地がしないよ~~~! ではなくて。
僕の背後に真近くまで近づいている落ち武者の姫武将さまへと御水もしくは聖水を与え、供養をすると言った行為をして。僕の背後に迫る彼女には成仏してもらいたいと思う気持ちもある。
しかし昭和の時代……。終わりが近づく時代には、今の令和の時代のような各メーカーからお水の販売が自動販売機にある訳はないから。
僕の背後……。
まあ、真近くまできている彼女には熱いコーヒーかココア、ポタージュスープ辺りで勘弁……。
僕は許してもらえないか? と、恐れ慄いている最中なのだが。僕がこんなつまらないことを脳内で思う悪態をつくものだから。
《ドン!》
《ガン!》
彼女……。
そう落ち武者の姫武将の物の怪さまは、大変に丁寧と言うか? 律儀に僕の背中に倒れ込んできた。
だから僕の身の毛がよだち。
「ぎゃぁ、ああああああああああああっ!」
と絶叫! 奇声を上げてしまう。
しかし真夏の夜を彩る怪奇シネマのような物の怪ヒロインさまは。僕の背後に倒れ込みしな垂れかかるだけではなく。
「み、水をください……。水を……。頼むからください……」
と呻り、告げつつ抱きついてきたから。
僕はそのまま、お化けのヒロインさまと地面に倒れ込み。
《ドン!》
《ガシャン!》
と大きな音……。
それもこの農協の購買部の駐車場に響き渡るくらいの僕の地面との打撲音よりも、背後から抱きついてきた落ち武者の姫武将の悪霊が着衣している甲冑が地面に当たり──響く金属音が辺り一面に響き、木霊して終われば。
僕は刹那は刹那な状態へと陥っている訳だから。僕は更に自分の毛が逆立つほど畏怖しながら。
「うぎゃぁああああああっ! 誰か助けてぇええええええっ! 助けてよ~~~!」
と叫びつつ、自分に抱きついて離れない、落ち武者の姫武将から、自分の手や足を使用して抗い、離れようと試みる。




