3ー26
「伏せてっ!!」
私が全力で叫んだ瞬間でした。二つの光が、お互いに強くなり、次の瞬間には、凄まじい音と衝撃が、結界内に居た我々に、襲い掛かったのです。まるで、爆弾が吹き飛んだような、そんな感じに思いました。勿論、爆発なんて体験した事はありませんが。
「っ!」
「くぅっ・・・!」
押さえきれないうめき声が上がってしまいます。清流院さんが、結界を更に強くしたのが、視界の端に見えました。しかし、あまりに強い衝撃に、私も清流院さんも伏せたまま、動けません。何とか、辺りを見渡しましたが、雅君や龍崎さん、真由合さんの姿が分かりません。眼鏡が無いので、土煙と霊的な色んな物が邪魔をして、私の視界を遮ります。
轟音が収まり、我々が動けるようになったのは、それからしばらく経ってからでした。体感では多分、五分か十分か。
「・・・・・美鈴さん? 無事ですか?」
「・・・えっ? 清流院さん・・・? えぇ、何とか・・・まだ、ちょっと耳が変ですけど」
まだ、耳の奥に、爆発の音が聞こえる気がします。頭を降り、切り替えますが、それでも直ぐには動けません。
「皆さんは?」
気になって、また辺りを見渡します。先程よりも、少し落ち着いたからか、視界には皆さんの姿が見えました。
「良かった、無事ですね」
遠くにいますが、真由合さんは魔方陣内で無事のようで、呪符を片手に何かをしていました。龍崎さん、雅くんも、結界により無事だったみたいです。しかし、矢上さんと白木さんだけは、先程から姿を見ませんね。
「あれ? 矢上さんと白木さんは?」
不思議に思って、辺りを見ますが、やはり矢上さんと白木さんの姿はありませんでした。
「彼らは別部隊ですから、大丈夫ですよ」
そう、はぐらかされてしまいました。そういえば、私は詳しくは聞いてないんです。ただ、二つの品物を逢わせれば、何か起きるだろう。とは、我々も分かりますし、そこで、対策する、筈だったんですが・・・。
「明らかに、想定外ですね・・・光に闇が反発して、爆発したように見えました」
「私もですよ、結界には自信があったんですが・・・」
清流院さんが悔しそうに、前方を見ていました。
「あの、何だか、闇の方が・・・変じゃないですか? 光から、逃げてるような・・・」
ユラユラと蜃気楼のように、闇が立ち上ります。光が近付けば近付く程に、闇が強くなります。
「・・・どうしましょう?」
これは迂闊に手を出す訳には、いかなくなりました。予定では、何かしらの反応がある、くらいだったんです。こんな盛大な反応までは、想定していませんでした。今は眼鏡を外しているので、色んな物が見えています。
「これ、もしかして、印籠の方は・・・光から逃げているのかも」
あれだけの闇の力を纏えば、当然、光の力に対して、抵抗するでしょう。自分とは相容れない、相対する力なんですから。
「予想外にお互いの力が強いですね、雅君達も迂闊に手を出したりは出来ませんし・・・」
清流院さんの冷静な言葉に、私も頷くしかありません。でも、手をこまねいている訳にもいきません。我々は、これを、この状況を“解決”しないといけないのですから。
「別動隊の二人はともかく、厄介ですねぇ」
苦々しい口調の清流院さんです。迂闊に手を出せば、何か予想外の事態になりそうなんですよね。
「こういう時は慎重に・・・・・って、真由合さん!?」
視界の端に、何か呪文を唱えながら動く、真由合さんの姿が見えました。恐らく、この硬直した事態に、嫌気が差したんでしょうね・・・。
「不味いですよ! 今、何か、刺激を与えたら!!」
真っ青な清流院さんが、言い放った瞬間。
ーーーーー辺りが、視界が、全て白い強い光に染まりました。
◇◇◇◇◇
辺りが白く染まった状況に、咄嗟に、また、地面に寝そべります。結界のおかげでか、霊的な衝撃はありません。あるのは、物理的な突風と、それに乗ってくる砂です。
真由合さん、大丈夫でしょうか・・・?
あの強い光は、恐らく、着物に憑いていた女性です。呪文を唱えていた、真由合さんに反発したんでしょう。
「うっ・・・」
未だに風の衝撃が消えないですし、顔や体に当たる砂等が当たり、顔が痛いくらいです。おかげで、前が全く見えません。
「美鈴さん、平気ですか!?」
現場慣れしている清流院さんは、何か対策でもしてるんでしょうか? 近くから、確認の声がしますが、私は砂の嵐に、口すら開けられません。物理的な突風までは、結界で防げないので、仕方ないのですが。
やっぱり、経験の差が出ている気がします。
「ーーーーーて・・・しょう!?」
真由合さんの何か叫び声が、途切れ途切れに聞こえます。何か展開があったのかもしれません。
と、急に砂が止まりました。すっかり、砂を被り、顔がザラザラしますけど、そんなのは後です。
「ーーーーーえっ・・・? 居ない・・・?」
先程まで居た、あの二人の霊が、居なくなっています。着物も、印籠も、姿がありません。こ、これはかなり、不味い展開ではないでしょうか?!
「美鈴っ!」
少し離れた場所にいた皆さんが、此方へ来ます。唖然とした私に、真由合さんが駆け寄ってきます。改めて見ると、皆さんも砂だらけです。
「大丈夫?」
「はい・・・でも、彼らが」
居なくなってしまったけれど。余りの事に、まだ呆然としています。この展開に、ついていけて無いんです。




