3ー25
お待たせしました! ようやく、物語が動きます!
直ぐに準備を始めました。
祭壇やら、結界やら、諸々とやる事はあります。
・・・・・夜、満月が登り始めた頃、ようやく準備を終え、皆でホッとしたのは、無理からぬ事です。本当に大変でした・・・。遠くを見て、黄昏るくらいには。
いくら仕事が出来る皆さんでも、流派が違うため、準備一つ取っても確認が必要な訳です。いくら経験があれど、やはり、確認は必要なのです。
なお、夕方には、清流院さんが合流しました。
水島くんは、検査の結果、やはり骨にヒビが入っていたらしく、大事を取って、所長に預けて来たそうです。
あぁ・・・、水島くん、頑張って下さいね! きっと、皆様から、ありがたいお話をされるはずですから・・・。
今頃、泣いてるかもしれませんけど(笑)
私は残念ながら、機会はありませんでしたが、仲間の皆さんの会話から、流石に私も理解しました。
・・・・・一流たる者、自分の命も大切にすべきなんです。
「美鈴、そろそろよ? 何が起きるか、分からないんだから、絶対に結界の中に居てちょうだい」
「はい、分かってます、やっとですね」
今回の案件は、本来、バラバラだったもの。それが一つに繋がったのです。
「無事に終わればいいんですけど・・・」
花嫁衣装は、キラキラした思いのお陰か、歪んでいません。綺麗なままです。
しかし、印籠は違います。浄化もされていないため、歪んだままの姿のはずです。皆さんは、黒い影を見たと言っていましたが、私は確認していません。触れる事も、浄化も拒絶されています。
「終わらせるのが、我々の仕事よ」
キリッとした真由合さんが、格好いいです。
「・・・・・そろそろ、ですね」
満月が空に登り、煌々と辺りを照らしています。駐車場ではありますが、我々の車がポツンと隅にあるだけで、広々としたこの場は、物悲しい感じがします。我々はライトを付けていません。この場を照らすのは、満月の月明かりだけです。
「二人とも、行くよ」
雅くんの合図で、私達は予定通りの場所に、動き始めます。
・・・とはいえ、私は安全な結界内へ避難ですが。一緒に居るのは、結界担当となった、清流院さんです。
「雅くん、大丈夫でしょうか?」
先程まで、普通に準備を手伝ってましたが、その前に一度、倒れているんです。心配になります。
「大丈夫、とは言えませんが、動いていた方が、彼は楽なのかもしれませんね」
多少の苦笑と共に、清流院さんは返してくれましたが、雅くんは、龍崎さんと一緒に行動しています。
真由合さんは、また別の担当をしており、今回は大変珍しい事ですが、チョーク片手に魔方陣制作をしていました。流石、天才。細かいのは苦手と言いつつも、普通にやってのけていました。本人は準備中、凄く不満そうでしたけど。終わった時は、満面の笑みでした。
勿論、今は、全員が待機しています。
「あら? 矢上さんは?」
先程まで、確かに真由合さんのところに居たのに。気になって辺りを見ても、姿が見えません。清流院さんも、祓い串を片手に、結界を維持しながら、辺りを確認しています。
「おや、確かに・・・確か彼は・・・」
そう、何かを言いかけた時、暗がりでも分かる程に、印籠がカタカタと動き始めます。時同じくして、蓋を開き、中から広げていた花嫁衣装もまた、淡く点滅を始めました。
ーーーーーどうやら、始まったようです。
「・・・うーん、共鳴でしょうか?」
反応はそれだけなので、眼鏡を外している私には、正直、戸惑いの方が強いです。ここは、駐車場用にライトも無いので、本当に月明かりだけに照らされています。
とはいえ、眼鏡を外した私自身、夜目は効く方ですし、何よりも“色々”と見えているため、視界はそこそこ明るいです。
「共鳴・・・いえ、これはどうやら、そんな優しい物ではないようですねぇ」
清流院さんの僅かに焦った口調に、私は驚いて、辺りを確認します。どうやら、気付かなかったのは私だけのようで、龍崎さんと雅くんは、お札を手に臨戦体勢ですし、真由合さんも離れたところで、何かをしています。私から離れた場所のため、詳しくは見えませんが。
と、確認した瞬間、私と清流院さんが居る辺りの結界に、何かが当たる音が響き渡ります。音は、何か強い風のような、衝撃波と言うんでしょうか? そんな感じのがバチバチと当たっています。結界は、普通の風は通りすぎますから、これは間違いなく、霊による現象です。
「これ・・・」
何度も当たる音に不安になります。清流院さんの結界があるとはいえ、彼の表情も険しいままです。
「これは、・・・衝撃波でしょうか? 印籠と花嫁衣装が、反発しているかのようです」
反発している。それで私も理解しました。今まで、光に包まれ、光の中で守られるようにしていた、女性の霊。逆に、影のような姿をしており、浄化にすら反発した、印籠。
当然、光と闇である以上、反発するのは当然な訳で。
「大丈夫なんでしょうか?」
「何とも・・・今回は、不測の事態が起きすぎですねぇ」
忌々しそうに、清流院さんが呟いています。
「ーーーあっ!」
急に光だした花嫁衣装から、着物を着た若い女性が現れます。私が以前、花嫁衣装を鑑定した時に、現れた女性だと、直ぐに分かりました。髪を結い上げているので、江戸時代辺りの人だと思います。
時同じくして、影が人の形を取ります。私は初めて見ますが、シルエットからするに、男性のように見えます。
でも、影がハッキリしません。
「美鈴さん、何か見えますか?!」
清流院さんが問うて来ますが、先程から続く結界に当たる音が大きく、集中できません。
そうこうしているうちに、事態はどんどん動いていきます。
「ーーーえっ? 待って!!」
花嫁衣装が女性に反応して、強い光を放ち始めます。同じように、影の人が宿る印籠も、黒い光を放ち始めます。
何だか強い力を感じます。このままは、危険です!
「伏せてっ!!」
私が全力で叫んだ瞬間、二つの光が一際大きく輝いて、そして、結界内の我々にすら、凄まじい音と衝撃が襲い掛かったのです。




