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次回は誠意執筆中です。
もうしばらく、お待ち下さいませ。
困りました。我々の依頼である着物ですが、かなり厄介な品物だったようです。
「さ、冴子は・・・このままなのか?!」
流石に、ご子息は顔色が悪いです。好きな人が、違う雰囲気で、自分に言うのです。婚約者の異変に、受け入れられないようです。
「今のところは、害はありませんから、ご安心ください・・・」
「何とかしてくれよ!! もうすぐ結婚式なんだぞ!?」
龍崎さんに詰め寄り、首元を掴み上げようとしたところで、いつの間にかそばに居た執事さんに、あっさりと捕獲されていました。な、何とも鮮やかなお手並みで・・・。こちらは、あわやの事態でしたので、緊張が走りましたが、あちらは皆様、普段通りでした・・・。日常茶飯事、なのかもしれません。その、お疲れ様です。
「・・・うちの息子がすまない」
申し訳なさそうに、依頼人さんが頭を下げていました。なお、息子さんは、鮮やかなお手並みで、隣室に下げられました。・・・・・一連の流れが、あまりにも鮮やかなお手並みでしたので、思わず、遠い目になりました。
使用人の皆様の一流さを、こんな時に拝見するなんて・・・。誉めればいいのか、同情すればいいのか・・・。
「お気に為さらず・・・しかし、こうも執着する物があるなら、歴史から見た方がいいかもしれん」
「そうですね、謂れを見る方が、上手くいきそうです」
龍崎さんの発言に、私も頷きます。こうも、花嫁に執着する以上、やはり、何かしらの出来事があるのでしょう。なお、冴子さんは、良く分かっていないのか、ニコニコと穏やかな笑顔のまま、我々を見ていました。まるで、無邪気な子供を見ている気分です。
「ねぇ、美鈴・・・あの着物に触ったら、何か分からないかな?」
雅くんの提案ですが、困惑、が正しいかもしれません。私が触れば、確かに読み解けそうですが、それ以前に、です。私の力は強すぎて、制御はほとんど効きません。つまり、暴走もありえるのです。
「これだけ希望とかが染み付いているなら、問題は起きないんじゃないかな?」
雅くんの言い分も、勿論、分かります。確かに、正の感情が多いならば、負の感情のような危険は、無いとは思います。と、今まで成り行きを見ていた矢上さんが、口を開きます。
「・・・・・でも、負担は大きいんじゃない? 彼女、えっと、神戸さんだっけ? 視る力が強い分、負担は大きいでしょう? 無理はしないほうがいいと思う」
彼は確か、陰陽師を学んでいる方でしたね。広い知識をお持ちでしょうし、実力は、龍崎さんと雅くんの間とか。力だけなら、雅くんに軍配は上がるそうですけど。なお、情報源は所長です。一体、どこからそんな情報を、拾ってくるのやら。謎が多い方です。
「とにかくやってみます! 万が一の時は、よろしくお願いしますね」
こればかりは、やってみないと分からないので、他の皆さんにお願いしました。
「依頼人さん、大変申し訳ないのですが、着物に触れて鑑定します、汚す事は無いでしょうが・・・」
ない、ですよね? 心配になってきて、口調が尻すぼみになります。
「あぁ、宜しく頼む、休憩する部屋も用意しておこう、あった方がいいだろう」
それを聞いても、あっさりとしており、部屋まで準備とは、今回の依頼人さんは、理解のある方のようです。助かります! まぁ、大きな家は、こういう裏側に通じている方が多いですからね。逆に、成金とかの方は、裏を知らない方も多く、子供や孫の世代で苦労するようですね。・・・・・闇を引き寄せてしまって。豪華な物を買っても、それを生かすも殺すも、結局は自分か家族なのです。
「ありがとうございます」
丁寧に頭を下げてから、眼鏡を付けたまま、着物へ向かいます。眼鏡を外してしまうと、眩しくて気が散りそうです(笑)
「始めます」
そっと、着物に触れました。視界の端にキラキラと見えますが、やはり、眼鏡のお陰で、そこまで眩しくはありません。
目を閉じて、意識を着物に集中させます。
しばらく着物へ意識を向けていると、目を閉じた視界に、何かがぼんやり見えてきました。
「・・・何でしょう? 何処かの日本家屋かしら?」
そこには、ニコニコと皆が笑顔で、何処かを見ています。気づけば、黒い着物の皆さんに囲まれていました。他にも、赤やら緑やら水色やら、色とりどりのドレスを着た人達も居ます。
「・・・結婚式? いえ、でも、家屋で?」
厳粛とは言いませんが、ある種の興奮を感じます。もしや、屋敷での披露宴みたいな物かもしれません。とても立派で広大な日本家屋ですし。
・・・そういえば、借金の代わりに、買い取る形で着物は此方へ着たんでした。つまりは、今現在、私が見ているこの豪華なお屋敷は、着物があった前のお宅なんです。借金をする前は、かなり羽振りがいい、旧家のようです。
と、また、場面が変わります。
同じお屋敷のようですが、何だか、皆さんの着ている物が、今よりも古いように思います。若い方々は、振り袖ですし。
こんな感じで、何度も何度も場面が変わり、そして、多分ですが、明治かそこらまで遡った時でした。
また、笑顔の皆さんに迎えられた花嫁さんを見て、そろそろ場面が変わる、そう感じた時の事です。
ポンッと、弾かれました。明らかに、着物が意識的に拒絶したんだと分かります。目の前には、首を横に振り、絶対に通さないとでも言うように、腕を広げる女性が一人。
多分ですが、冴子さんに憑いている方、だと思います。お顔立ちが同じですから。青い着物を着て、髪を江戸の頃のように結い上げています。察するに武家の方に感じますが・・・。
何でしょう、彼女は泣いていました。はらはらと、涙が滑り落ちていきます。今までの方とは、まったく違う様子です。
そして、そのまま私は凄い勢いで弾き飛ばされ、着物から手を離していました。尻餅をついたような姿勢のまま、パチッと目を開きました。
「大丈夫!? 美鈴!」
いの一番に、雅くんが来て、私の側で不安そうにしています。
「大丈夫です、ちょっと驚いてしまって」
最後に見た、ほんの一瞬。花嫁が、泣いていたような・・・?
「神戸さん、平気? 体調は?」
矢上さんも心配そうです。うぅ、そんなに、白い顔をしていたんでしょうか?
「大丈夫ですよ、雅くん、矢上さん」
これくらいなら、特に負担はありませんでしたから。まぁ、龍崎さんは、私から話を聞く気、満々みたいですし?
「何を見たか、教えてくれるか?」
「はい、勿論」
何かヒントがあればいいんですが。




