就活の時期
掲載日:2013/12/07
見慣れているはずのその姿が、
全く知らない人に思えた。
リクルートスーツに身を包んだ先輩は、
初めて出会った大人のようで。
「おつかれ」というその言葉も声も、
もう何度も聞いたはずなのに、
確かに先輩の声なのに、
なんだか妙に、遠くに響く。
遠いなぁ――。
いつだって先輩は遠かった。
いつだって私たちの数歩先を、
軽やかな足取りで歩いていた。
そうしてときおり振り返りながら、
「こっちだよ」
追いつくのを、待ってくれた。
先輩――。
かっこいいなぁ。
すごいなぁ。
あざやかだなぁ。
華麗だなぁ。
隣にいるようでそばにはいなくて、
手が届きそうで、届かない。
後姿に魅せられて、
その姿を追いかけた一年間。
まるでドラマの総集編みたいに、
過ごした日々があふれだす。
――もう、その時期なのですね――。
――もう、その時期なのですよ――。
すこしはにかんでいたけれど、
物静かな暖かい微笑みは、
見慣れたいつもの先輩だった。




