#7
「お待たせ」
私は朝ごはんを食べ終え、部屋に戻った。
「おかえり。朝ごはんは美味しかった?」
「うん! 美味しかったよ」
「突然だけど……いつにする?」
本当に突然だなぁ……。
あのー……人語を話すクマのぬいぐるみさん?
あともう少しだけお母さんが作った温かくて美味しい朝ごはんの余韻に浸らせてほしいなぁと思ったんだけど。
ぼんやりと壁にかけられたカレンダーを眺める。
「……登校日……は?」
「登校日? 君の学校の?」
「そう……その日に新しいクラスが発表されるから」
「ふんふん」
4月3日は私が通っている高校の登校日であり、離任式や新年度のクラスが発表される。
その日が私にとっては都合がいい。
始業式の日でもいいかなと思ってたけど、新学期早々だとなんだかなと思ったから。
「その日に静かに……」
「それでいいの?」
「え?」
「君は本当に後悔してない?」
「してると言ったら嘘になるけど、私はこうなる覚悟ができているから後悔はしてないよ」
「分かった。なら、決まりだね」
「うん」
よって、私は4月3日で生を終えることとなった。
それまでに私ができることをしっかりとやっておかなくちゃ。
†
4月2日。
いろいろとやっているうちにあっという間に登校日前日となった。
私は翌日の準備をしている。
「準備はできた?」
「うん。遺書も準備できたし……当日は一緒に学校に行ってくれるの?」
「君の最期を見届けるまで一緒だよ」
「ほんと?」
「本当だよ。だから安心してね」
最期まで一緒って……。
さらに、私は学校に人語を話すクマのぬいぐるみを持ち込むことになっている。
間違いなく不審人物だと思われるけど、開きなおって気にしないことにした。
「明日は早いから寝なきゃ……じゃあ、おやすみ」
「おやすみなさい」
私は最期の晩餐やお風呂を済ませていつもより早めに眠りにつく。
私の人生が終わるまで、あと数時間――。
2025/10/06 本投稿




