#12
「よって、あなたには余命は少ないということを理解していただきたいのです」
「それは分かったから。じゃあ、わたしの余命は何ヵ月なの?」
「あなたの余命は……保っても4、5日くらいですかね」
突然言われたわたしの余命宣告。
4、5日ということは何もできないじゃない!?
「先ほど、何もできないではないかと思っていませんか?」
「確かに思ったよ。残りの時間は短いけど、何かできることってないかなと思ったから」
「あなたに1つだけやらなければならないことがあるのに、分からないのですか?」
「ベビー服とオムツの準備……あとは離乳食も準備しておきたいところだけどなぁ」
「いいえ、違います。あなたがやるべきことはマタニティハラスメントの張本人に対する復讐ではないのでしょうか?」
「……うっ……」
私は第一に出産準備しかでてこない。
しかし、彼は「復讐」という全く違うことを言ってきた。
「あなたのお腹の中にいる赤ちゃんは最終日に先ほども言った通り私が取り上げますので」
「はい。それですべてが終わったら、わたしはこの世からいなくなるということでしょ?」
「その通りです」
なんとなくではあるが、繋がってきたような気がする。
もう、それでいいと感じ始めている自分がいた。
「契約しちゃったから、仕方ないよねー」
「そうですね。本当はもっと生きたかったはずなのに」
「それはそうよ! お腹の子が大人になるのを見届けてから、さよならしたかった」
「そう考えていたのですね。ところで、復讐のことなのですが……」
「何?」
「普段の私は他の人には見えませんが、あなたが復讐すると決めた時に周囲も私の姿が見えるようになります」
「あなたが他の人には見えないことはさっき病院の更衣室やナースステーションにいた段階で分かっていたよ。それなのに自分からバラすんだね」
「それが私の宿命でありますから」
彼はニヤリと笑ったように見える。
その笑みはいつもより闇が入っていたような気がして、なんだか怖い。
なんかさっきから彼はだんだんエグいことを口走っているんだけど…………。
「そんなに私のことが怖いのですか?」
「はい」
「今のうちにこの怖さに慣れておかないと、これからもっと私は恐ろしくなりますよ……」
「慣れればいいでしょう。慣れれば!」
「ええ。では、復讐する日時はいつにしましょう?」
「いつでもいい。そこはあなたに任せるから!」
「分かりました。明後日で構いませんか?」
「いいわよ!」
「それでは早速、準備をしなければなりませんね……ははっ……」
最後のは明らかに悪意を持ったような笑い声だった。
もしかしたら、彼はこれから復讐するその時まで、ずっと本性を晒していくのかもしれない――――。
2017/12/31 本投稿
※ Next 2018/01/01 4時頃予約更新にて更新予定。




