#5
翌日……。
わたしは目覚まし時計のアラーム音より早めに目が覚めてしまった。
今日は本来は検診のため、希望休を入れていたが、人員不足の関係上、「午前中だけ出勤してほしい」と主任からの連絡が入ったのだ。
幸いにもわたしは寝る前だったため、その連絡を受けることができたのだ。
「彼はどうにも裏があるんだよなぁ……」
わたしはベッドのかけ布団を直しながら、あの時の表情を思い出す。
その表情は微笑というか嫌味というか……。
「何か言いましたか?」
「い、いえ! 何も。おはようございます」
「おはようございます」
「って、なんで人の部屋にいるのよ!?」
「私はあなたを起こしにきただけです」
気がついたら、彼が寝室にきていた。
彼は氷のような冷たく、鋭い視線がわたしに向けられているような気がする。
寝室にいるのは、わたしと彼しかいないため、視線を逸らそうとしても意味がない。
「猶予は本日の22時ですよ? 今から告げても、ギリギリまで悩んでから結論を出しても構いませんので」
「はい」
「もし22時を過ぎてしまったら、忘れてませんよね?」
「ええ」
そういえば、わたしは彼に「契約するか、しないか」を答えなければならない。
その時間までに結論が出なかった場合は「強制的に契約を結ぶ」と彼は言っていたので、なんとかして決めないと。
そんなのは、分かってる。
いくらなんでも初対面で突然「契約云々」と言われて、ビビるし、どうしようか焦りも覚えるから――。
わたしは部屋のカーテンを開け、そこから出ようとした時、彼の口から「そういえば……」と呟いた。
私は彼が何か言いたそうな雰囲気だったので、「んー?」と反応してみる。
「1つだけ私からあなたに告げていないことがありましたので、この機会に」
「な、何?」
「実は私、医師免許を剥奪された無資格医です」
「えっ!?」
唐突にそのようなことを言った彼は冷や汗をかいているわたしに向かって、「意外だと思っていたでしょう?」と冷笑を浮かべながら告げた。
「医師免許を剥奪された無資格医」って何!?
も、もしかして、最初に見せられた医師免許は偽造だったということなの!?
2017/10/28 本投稿




