#4
その日の夜――。
私は彼女に「私と契約を結びませんか?」と問いかけたが、「契約? わたしは嫌よ!」ともの凄く苛立ちを覚えたような表情をして答えていた。
彼女と交わさなければならない「契約」。
私は彼女とそれをしなければ話が続かないのだ。
その条件は「明日の22時までに答えを出さなければ、無条件で「私と契約する」」というもの。
「はぁ……果たして彼女は決められた時間までに答えを出してくれるのでしょうかね……?」
彼女は大人しく「分かりました」と話していたのだが、実際にはどうなるかは分からない。
現段階では寝床で気持ちよさそうに眠る彼女を見てふと思う。
「私の正体は医師免許を剥奪された無資格医だということにバレていますかね?」
彼女はおそらく私が無資格医だということにすでに気がついていたならばどうなのだろうか――。
白衣のポケットから医療用メスを取り出し、ちらつかせながらほくそ笑む自分がいた。
「さすがに、彼女と契約を結んだわけではないのに、人にメスを向けるのはよろしくないですよね……」
溜め息をつきながら、医療用メスをしまう。
しかし、いずれは私のこの医療用メスによって――。
「それは彼女の意志次第ですよね。それによって、どうなるかも分からないですし……」
私は彼女が眠っている部屋だと居づらさを感じ、リビングのソファーベットで一夜を明かした。
2017/10/07 本投稿




