#8
翌日――。
「お嬢様、朝ですよ! お仕事に遅刻してしまいますよ!」
「わふーい!」
「先ほど仰っていた「わふーい!」とは何ですか?」
「えっ!?」
私は執事くんに叩き起こされて目が覚めた。
そもそも、さっき言った「わふーい!」ってなんだ? 「わふーい!」って!?
そういえば、私は温かいお布団に包まれながらぐっすりと眠ってしまったようである。
「ふぁぁ……おはよう」
「まったく。ようやく目が覚めましたか。朝食の準備はすでに済んでおりますので、着替え終えましたらリビングにきてくださいね」
「はい」
彼にこう言われたため、私は急いでパジャマから私服に着替え、リビングに向かった。
そこには湯気立つ温かいスープとハムエッグ、おそらく焼きたてであろうパンの匂い――――。
「ありがとう。でも、今日で最後なんだよね?」
「ええ」
「なんだかあっという間だったな……さて、急いでご飯を食べなきゃな」
「そうですね。味わって召し上がってくださいね」
執事くんが作ってくれた朝食を食べ終わり、私は身支度を整え、職場へ向かった。
もちろん、その前に労働局に電話をかけたのは事実――。
†
「おはようございます!」
私が職場に着いた頃には何人かの同僚が地獄の業務開始を告げるチャイムが始まるまでの間、談笑をして過ごしている。
「おはよう」
「おはようございますー」
彼らの談笑に混ざろうとした時に、私達の職場の扉を叩く音が耳に入ってきた。
しかし、私達はその扉を叩くことはあまりないため、外部の部署の人かもしかしたら労働局の人がきたのかもしれない。
「おはようございます。労働局の者です」
「「お、おはようございます!」」
やはり私の予想は的中し、労働局の人が何人か駆けつけてきた。
「あ、あのー……労働局の人がきたのは驚きですが……」
「執事みたいな奴、うちの職場にいないよな?」
「確かにそうですね」
「見慣れないし……」
彼らは労働局の人達を見て、驚きを隠せない模様。
そして、執事くんの姿もくっきりはっきりと見慣れない人間として認知されているし……。
「執事くん、私はさっき労働局に電話したばかりだけど?」
「実は僕、昨日のうちに労働局に連絡させていただきました」
「そんな話は聞いてない! なんで姿形を現してるのよ!」
「あれ? 覚えていませんか?」
確かに彼の姿は普段は私しか見えない。
私が「復讐しようと決意した時」にしか姿を現さない」と言っていたことを思い出した。
今は復讐の刻が近いからこういうことになっているのだから。
よって、私が生きていられる時間はあとわずか。
それまでに遺書の用意をしておけばよかったと今更後悔している私がいた。
2017/04/06 本投稿




