表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/51

#5

 私は彼の正体(そのこと)についてもやもやしながら、箸を進める。

 彼のことだから真面目な能力(スキル)とかが備わっていそうだと思った。

 例えば、戦闘能力とかのようなごく普通の能力とか-―。


「……そ、そういえば……」


 彼はふと何かを思い出したかのように口にした。


「えっ!?」

「僕はお嬢様に1つだけ言い忘れたことがあります」

「何?」

「僕の正体についてなのですが、実は僕、「殺人鬼(・・・)」ですので……」

「は!? 殺人鬼?」


 彼と出会ってからずっと気になっていたその正体……。

 私は驚き、フォークを皿の上にガシャンと落としてしまった。

 まさか、慇懃な執事のような彼が「殺人鬼」だったとは思ってなかったから――。


「ふふっ。随分と驚いていらっしゃいますね……」


 彼は苦笑を浮かべている。

 そして、どこか面白そうに笑い始めていた。


「そ……そりゃ、驚くよー」

「デスヨネ……新しいフォークをご用意しましょうか?」

「大丈夫」

「ただ、僕は普段はどちらかというと口が悪い方ですけどね。お嬢様に仕えている以上は素を晒すことができないことがネックですが」


 あの執事くんが素を晒すとどうなるのかなぁ……少し興味があるけれど、私は「そうなんだ……まぁ、復讐ねー……」とぼやく。

 彼は「お嬢様は早速、本題に入るのですね?」と先ほどと同様、(たの)しそうな表情を浮かべていた。


「べ、別にいいでしょう!?」

「どのような要望ですか? この僕がその要望にお応えいたしましょう」

「私はあの職場に対して、「復讐」というより、「裁判沙汰」にしたいの!」

「ええ。それは……?」

「定時でその時間までの給料はまだ分かるよ? 残業をたくさんやっても残業代があまり支払われないって「労働基準法」に絶対、絶対、ぜーったい違反してると思うの? それで…………」


 私は彼に今までに溜まっていた仕事の鬱憤を晴らすかのように2、3分くらいはずっとしゃべっていた。

 それにも関わらず、彼は黙り、頷きながらその話を聞いている。


「…………粗方はご承知いたしました。後日、その職場をこっそりと視察してもよろしいでしょうか? 口頭では簡単に済ませることができますが、実際にその様子をご覧にならないと分からないことはたくさんございますので…………」

「確かにそうだね。私の口からは簡単にじゃんじゃん言えるけど、実際に見てみないと分からないもんね……」

「左様でございます。僕はできる限りこっそりと(・・・・・)その様子を……」

「って、周りからあなたの姿がバレバレじゃない!」


 私は彼が話しているのにも関わらずに遮ると、「僕はお嬢様が「復讐しようと決意した時」にしか姿を現しません」と私の耳元で囁いた。

2017/03/25 本投稿


※ Next 2017/03/30 0時頃更新にて更新予定。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ