#12
1時限目の社会と2時限目の数学が終わり、僕は午前中最後の授業である家庭科の授業のため、家庭科室に移動している。
もちろん、人外である彼も一緒だ。
「今日は調理実習で何を作るんだ?」
「「簡単な朝ご飯」がテーマで主食はご飯って決まってるから、それに合うおかずを作るんだ。僕の班は鯖の味噌煮とほうれん草のおひたし、豆腐とワカメの味噌汁。各班ごとに作るものが違うよ」
「そのあとは給食だよな?」
「今日はたまたま「お弁当持参の日」だから、給食は出ないよ」
僕が通っている学校では月に1、2回くらいのペースで給食が出ない「お弁当持参の日」がある。
その日に家庭科の授業で調理実習があると凄く幸せだ。
なぜならば、いつもなら調理実習の後に給食だから、通常ならば人数分を作らなければならないが、半分くらいの量を作ってそれを分けなければならないため、個人的には調理実習をやった気にはならないから。
「ふーん」
彼はまるで興味がないらしく、そっぽを向きながら僕の後ろを歩いている。
「僕の話、全然興味がないんだね。そんなに可愛い子探しをしていても何も見えないなら意味ないよ」
「し、少年の話はちゃんと聞いているからな!?」
「なんか怪しい」
「怪しくないぞ」
そのような会話をしているが、彼の姿や声はすべて僕しか見えないし聞こえないため、周囲からは1人でぼそぼそしゃべっている怪しい奴だと思われているに違いない。
僕の前を歩く他のクラスメイトは仲のいい人同士で楽しそうに話しながら移動しているため、凄く羨ましく感じられる。
それに対して僕は彼らが歩いた道をただくっついて歩いている……って、ここは道ではなく、廊下だ。
僕はこう思いながら歩いている。
そして、不意に「……くそっ、リア充め……」と誰にも聞こえないように呟いていた。
みんな楽しそうでいいなぁ……。
彼らは僕が考えていることやその立場なんて、おそらく分かっていないよね?
ねぇ、みんな。
これからは僕がみんなにたくさん楽しいことをさせてあげるよ?
「いじめの復讐」という名のお遊びをね――。
†
その時、俺はこれから少年が何を始めるかを察していた。
今から始まるのは家庭科の調理実習。
そういえば、まだ数時間しか経っていないが、これまでの少年の様子を見てきて、彼は本当によく耐えてきたなぁと感じられた。
もしも、俺が人間だったら、どうなってしまうのかは想像しがたいが――。
ほう……これから始めるのか。
「復讐」という名の愉しい愉しい時間が――。
さあ、契約者よ。
気が済むまで、思いっ切り裁くがいい!
2017/02/10 本投稿




