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【コミカライズ】俺、勇者じゃないですから。~VR世界の頂点に君臨せし男。転生し、レベル1の無職からリスタートする~  作者: 心音ゆるり
アフターストーリー

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Aー118 村?発見




 翡翠が身を挺して痛みの度合いを検証してくれた結果、この死ぬことが無いダンジョンでは、現実となんら変わりのない痛覚が働いていることがわかった。ゲームであるテンペストと同じ仕様とはいえ、痛みに関してはそうではないらしい。


 これに関しては、少し安心だ。


 この場所で弱い痛みに慣れてしまい、外で実際の痛みを味わったときに身体が硬直せずに済む。

 しかし、いまのところなんかちょっと拍子抜けだな。


 敵はそこまで強くないし、広大な世界とはいえ、いまのところそれだけだ。まだまだ見ていない場所――というか、このダンジョンがどれほどの広さがあるのかもわかっていない現状、そんな風に判断するのは馬鹿らしいが。


「んん?」


 出発地点から七人で一直線に歩いていると、遠目に自然物ではない何かが見えた。近づくにつれて、それが建築物であることがわかり、そして家であることがわかり、そしてそれが数十軒立ち並んでいることがわかった。


 町……? いや、どちらかというと村みたいな規模だけど、もしかしてNPC的なキャラクターが存在しているのだろうか?

 警戒しつつ、七人でその村に近づいていく――が、


「無人みたいっスね」


 ドアをノックしたわけではないから正確ではないけれど、近くに来た時点で、一切人の気配が感じられなかった。

 碁盤の目のように縦横に整備された道があり、数は七かける七。全部で四十九棟あることが、一軒一軒を数えるまでもなくわかった。


 生活感が無いっていうかなぁ……どの家も綺麗だし、建築様式もバラバラで、人が建てたという感じではない気がするんだよな。イデア様が用意したんじゃないかって潜入感のせいかもしれないが。


「み、見てくれSR! 文字が出てきたぞ!」


「ん? お、ほんとだ」


 セラは一件の石造りの家の入り口の前に立っており、彼女の前には青白いウィンドウが浮かび上がっている。

 歩み寄りながら「なんて書いてあるんだ?」と聞いてみると、彼女は首を傾げながら文章を読み上げた。


「えっと……『3―A 所有者無し。価格5コイン』と書いてある……コインとはどういうことだ? お金ではダメなのか?」


「このダンジョン内だけで使える貨幣があるってことだと思いますよ」


 セラの疑問には、翡翠が答えてくれた。俺もそう思う――だが、人のいないこの世界でどうやってそのコインとやらを手に入れるのか。

 定番で考えれば、宝箱や魔物からのドロップということになるが。


 うーん……とりあえず今わかるのは、この家を手に入れることはできるが、いますぐは無理だってことだろう。なにしろコインがなんなのかすらわかっていない。


 元神であるノアにもあまりよくわかっていないようで、彼女は腕を組んでうなっている。


「ボス系統の魔物が落とすのかもしれないねぇ」


「ボスって見分けつくのかね?」


 普通のダンジョンだと、わかりやすく『ボスに挑む』なんて言葉で提示してくれていたけどさ、現実のボスってなによ。あ、いや、現実じゃないけども。


「さぁ?」


「強さ的にボス級って感じじゃないっスかね」


「まぁその考えでいいか」


 というか、出会った魔物は全て倒す予定なのだからボスとかボスじゃないとかはあまり気にしなくていいのかもしれない。大量発生なんてことが起きたらそりゃ全部倒すことは難しいかもしれないけど。


 あぁ、そのことも考えていなかったな。


 元のダンジョンでは階層ごとに魔物の数が定められていたけれど、この世界にはそれがない。百匹や二百匹が同時に襲い掛かってくる可能性もあるってことか。


「とりあえず、今日のところはこれぐらいで戻ったほうがいいかもしれないな。外にいる人達は現状を知らないから、きっと心配しているだろう」


「「「えー」」」


 俺とクレセントと翡翠の声が重なった。見事に地球メンバーだけである。


「フェノンやシリーは言いづらいだろうし、ノアもエスアールを優先しそうだから言わないだろうし、私が言わないとエスアールたちは突き進み続けるだろう? 私の知るエスアールなら『これからボスを探しに行こう!』とか言い出しそうだし」


 くっ、なんて俺の解像度が高いんだセラ。だってコインを落とすか確かめたいじゃん。どんなものなのか見てみたいじゃん。そしてコインを落とすことを確認出来たら家も実際に買ってみたいじゃん。


 その次はコインをためまくってこの村全部の家を買って『今日はどの家に泊まろうかなぁ』なんてやったら楽しそうじゃん。


「セラさん、ここで『私も一緒にボスを倒したい!』なんて言ったらエスアールさんの好感度が爆上がりっスよ!」


「はい! エスアールさん、私もボスが倒したいです!」


 クレセントの甘い誘惑にはフェノンが引っ掛かり、その隣にいるシリーもおずおずと手を上げて「私もです」などと言っている。


「まぁお兄ちゃんが行きたいというなら僕は止めないよ」


「ボスのことも一緒に報告できますから、別にいいんじゃないですかね」


 ノアと翡翠も賛成の意を表明し、こうなると六対一の構図になってしまう。正しいことを言っているはずのセラは、ぐぬぬと悔し気な表情を浮かべていた。


「……わ、私もボスを倒したい!」


「それってもしかして好感度上げようとしてるの? そんなことしなくても別に――」


「う、うるさい!」


 なにはともあれ、探索は続行することに。外でお待ちの方々、本当にすみません。





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