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【コミカライズ】俺、勇者じゃないですから。~VR世界の頂点に君臨せし男。転生し、レベル1の無職からリスタートする~  作者: 心音ゆるり
アフターストーリー

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Aー104 キャバクラ?




 クレセントたちと行動と一緒にしていたヴィンゼット姉弟は、疲れ果てた様子で帰って行った。感想を聞きたかったところだけど、その元気はないらしい。たぶん、王様たちへの報告も明日に回してもらったのだろう。


 アーノルドとジルにとっては、初のSランクダンジョンだ。彼らはAランクダンジョンを既にクリアしていたようだが、それでもやはりSランクダンジョンはきつかったらしい。

 とはいえ、原因は絶対にそれだけじゃなさそうなんだよなぁ。


 ついさっき、翡翠が『教えを請われたから』なんてことを言っていたし、無茶苦茶な強化訓練でもしていたかもしれない。レベル的な経験値はそこそこだろうが、実践的な意味での経験値量がかなりのものだったことが推測できる。


「いったいなにしたんだお前ら……」


「そりゃもう実践っすよ! まあまだ慣れてないみたいだったから、そこそこ苦戦してましたし、二対一になるとかなり厳しそうっすけど、ステータスがついてきたらSランクもクリアできるようになると思うっすよ」


「きちんとボクたちが見てたので、死なないように安全は確保していましたよ」


 クレセントの言葉に続き、翡翠もやや自慢げな表情で言う。なんとなく、ハードな特訓だったんだろうなぁと思った。だってこいつら、ゲームと同じ感じでやっていそうだし。

 一度死んだらゲームオーバーだということをちゃんと理解は……たぶんしてるんだろうけど、たぶん要求するレベルがテンペストランカー勢のものなのだろう。

 いちおうヴィンゼット姉弟は、探索者として国の代表者になるほどの実力者なのだから。


「……翡翠もクレセントも、大丈夫そうか?」


 翡翠とクレセントが向かいのソファに腰掛けたところで、俺はそう声を掛けた。

 いちおう、彼女たちはまだこの世界に来て日が浅い。日本で暮らしていた彼女たちが、こちらの世界になじめているかの確認で聞いてみた。


「まぁテンペストっすからねぇ」


「右に同じです。まぁもともとボクは入院生活でしたから、リアルの友達も少なかったですし」


 なるほど。たしかにこのゲームの世界は、地球の文化が大量に取り入れられているからなぁ。

 たしかもともとは、覇王ベノムを倒すためにこの世界を創り変え、地球に同種のゲームを作り、そこから強者――ベノムを単独で倒しうる人物を探し出した――みたいな感じだったか。


「たぶん『主食はゴキブリです』とか言われていたら、即、帰りたいって泣いてたっスね」


「そりゃ俺でも泣くわ」


「変な想像させないでよミカ……うぷ」


 クレセントのデリカシーのない一言で、一名負傷した模様。負傷というか、内臓をいじられたような感じだった。かわいそうに。俺も多少気分が悪いが。

 俺と翡翠で恨みがましい視線をクレセントに向けていると、彼女は両手を上げて、「二人とも耐性ないんすねぇ」とあざ笑うように言った後、手を自らの後頭部に回す。

 そして、つまらなさそうに言った。


「でもあれっすね。正直、ランキング戦もない、SSランクダンジョンもないとなると、鍛えた意味がないというか、こう――力の振るいどころがなくてめっちゃモヤモヤするっすね。Sランクダンジョンも、当然楽勝ですし」


「「あー……」」


 クレセントの言葉に、俺と翡翠は同時に声を漏らした。

 まぁでも、


「俺の場合は少しマシだったぞ。なにしろ、職業未選択のばりばり初期値でこの世界に来たからな。縛りアリみたいな感じで、苦戦することもあったし」


 俺がそう言うと、クレセントは「王女様救出劇の時とかっすね」と口にして、少し離れたところでセラと談笑しているフェノンに目を向ける。すると、フェノンの隣に座っていたシリーがこそっと耳打ちして、彼女はこちらを向いた。

 そして、にこやかに手を振ってきた。なので、こちらも振りかえした。


「うわ、デレデレしてるっす。まあフェノン様はめちゃくちゃきれいだし、あんな人からニコニコってされたらこうなっちゃうっスかねぇ」


「お人形さんって感じだよね、フェノン様。それをお嫁さんにしちゃうSRさんはやっぱりすごいってことだよ。しかもセラさんも美人で伯爵家の方だし、すごい身分の人たちなんだよね。気さくに接してくれるから、忘れちゃいそうになるけど」


 二人はそう言いつつ、こちらに視線を向ける三人にペコペコと頭を下げていた。ちなみに、ノアは俺の隣で横になって寝息を立てている。


「二人のことはそれでいいんだが、俺のほうはマジで勘弁してくれ。そんな大層な人間じゃないだろ、お前たちからしたら」


 この世界の人にとって、俺の持っていた技術は役に立ったかもしれないし、いちおうこれでも世界を救っているのだから、その部分は褒めてもいいのかもしれない。

 だが、俺がやっていたのはあくまでゲームだ。

 そりゃ馬鹿みたいに熱中して、本気で取り組んではいたけど、現実逃避からきたものだし、経緯は褒められたものではないと自覚している。それがあるからこそ、特に同郷の彼女たちからの称賛は素直に喜びづらい。


「まあゲームっすからね。でも、いちおう私たちもテンペストにドはまりしてたっすから、SRさんはやっぱり憧れっすよ。私が唯一、勝ち筋が見えないって思えた相手かもしれないっすね」


 プロゲーマーの彼女に言われると光栄だな。これまでに色々なゲームをやってきただろうし、その中で『唯一』と言われる、やはり嬉しい。


「SRさんは白蓮の使い方――というか、SRさんの魔王での戦い方に白蓮がマッチしすぎて、もう手に負えなかったもんね。ランカー五人に対して一人で挑むとか、絶対頭おかしいもん。――あっ、すみませんすみません! もちろん褒めてます! 最大級に褒めてるんですボクは!」


「あははっ、そりゃどうも」


 慌てる翡翠をなだめるように言う。なんだか二人が褒めるもんだから、まるでキャバクラにいるみたいな気分だな。行ったことないから妄想なんだけど。


 さて、明日はどうするかなぁ。





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