7 いま、ここに宣言します!④
さくらは墓前に出た。
「玲くんのお父さま、初めまして。さくらと申します。親の再婚で、玲くん類くんときょうだいになってしまいましたが、私は玲くんのことを……玲が大好きです」
墓の前で告白し合う高校生なんて、そうそういないだろう。
「決めた。玲も聞いて」
さくらは宣言した。
「私、京都の大学へ行く」
問題発言だった。
玲は目を瞠った。
「おいおい。もう、十一月下旬だぞ。志望校を今から変更するなんて、無謀だろうが」
「試験は、年明け。これから、うんとがんばる。死にものぐるいで」
「でもな」
「建築学科があれば、この際どこでもいい。合格さえすれば、あとはなんとかなる。京都に詳しい玲もいるし」
「軽い女だな。どこでもいいわけないだろ。学費を払うのは親なんだ」
「両親が新婚旅行から帰ったら、さっそく相談する」
「反対すると思うよ。理由が、理由だし」
「でも、諦めきれない。反対されたら、自分で学費を払うよ。今日、あとはどこに案内してくれる? 本屋さんに寄って、京都の大学案内を手に入れたい」
「昼めし、食って帰るつもりだ。もう、一時だし」
「よし、じゃあ行こう。私、昨日からパンとかコーヒーばっかりだったから、ボリュームのあるものを食べさせて」
「金持ちの類に、うまいものを食わせてもらっていないのか。てっきり、食って酔わされて、餌付けでもされたのかと」
「誰かさんのせいで、食事どころじゃなかった」
「はいはい。じゃ。こっちだ」
ふたりはJRの駅に向かうことになった。
「行きと違うんだね」
「嵐電のメイン路線は、四条大宮行きだから。京都駅ならJR。バスもあるけど、時間がかかる。三十分以上。渋滞していたら、もっとかな。嵐山は、電車利用が賢い」
「すべてお任せします、玲さま」
詳し過ぎて、すでにさくらには理解できない。
「肉でも食うか。おじさんにお昼代、もらったんだ。いかにも京都っぽい湯豆腐とかじゃ、あんまり食べた気しないだろ」
「うんうん。とんかつがいいな。おなかいっぱい、がっつりとんかつ」
「了解」
食事を終えたふたりは、嵯峨嵐山駅から嵯峨野線で京都駅へと戻った。
観光旅行ではないので、おみやげを買うかどうか迷ったが、新幹線の待ち時間に構内のおみやげ屋さんをふらついていたら、誘惑に負けてついついお菓子を買ってしまった。純花のぶんも。
帰りの新幹線の中では、お互いに寄りかかりながらぐうぐうと熟睡。
帰宅できたのは、午後六時だった。




