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【IFルート】10年ごしの引きニートを辞めて外出したら自宅ごと異世界に転移してた【集団トリップ】  作者: 坂東太郎
『IF:第八章 ユージと掲示板住人たち、異世界の街へ行く』

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IF:第八章 エピローグ


「お兄ちゃん、けっきょく冒険者ギルドは行かなかったんだね」


「うん。え、サクラは冒険者に興味あったの?」


「ううんそんな私じゃなくて! ほらジョージとかルイスくんがね! 私じゃなくてね!」


「サクラおねーちゃん、ぼうけんしゃになるの?」


 ユージたち交渉班が帰ってきた開拓地。

 トリッパーと掲示板への報告は終えているが、いまだにユージの家とその周辺はうわついていた。


 街に入れるようになった。

 開拓地として登録されたため、堂々とこの場所にもいられる。


 見つかったら排除されるかもしれないという不安はなくなり、中世ファンタジー風異世界の街に期待がふくらむ。

 うわついた雰囲気になるのも当然だろう。


 それにしても、ユージの妹のサクラは冒険者に興味があるようだ。

 夫のジョージとその友人のルイスのせいにしているが、本人が興味津々なのはバレバレである。

 ウソの下手さは兄譲りか。


「アリスもモンスターをえいってやる!」


「アリスちゃんに冒険者はまだはやいかなー」


「ええー? アリス、火まほーがとくいなんだよ?」


 冒険者に反応したのは、義妹のアリスだ。

 得意の火魔法で戦力になると主張している。

 アリスの足元にいたコタローも駆けまわってアピールしているのは、わたし、わたしもたおすわ、ということなのだろうか。

 血気盛んな幼女と犬である。



 一方で。


「よし、杭打ち終わり!」

「なあ、本当に横木はあとまわしでいいの? これで役に立つ?」

「接近される前にここから飛び道具で攻撃する。充分だろう」

「俺知ってる! 長篠の戦いの三段射ちってヤツだ!」


 いつもよりテンションは高いが、開拓班もきちんと活動していた。

 木々を倒し、根を処理し、柵を作る開拓班。

 畑を作る農作業班もすでに活動を開始している。

 二軒目の平屋を建てはじめた建築班、周辺を見まわる探索班もフル稼働である。


「ねえクールなニート、ちょっと相談いいかな?」


「どうしたミート?」


「ほら、今後はここと街を行き来することになるでしょ? 道造りの班も編制した方がいいんじゃないかって」


「なるほど……だが、人員が厳しいな」


「おいミート、先走るなって! 道を通しちゃって、盗賊とか変なヤツとか来たらどうすんだよ!」


 ユージとアリス、30人のトリッパーたちは『開拓団』という扱いになった。

 よその土地から移住してきて、領主の承認をもらって開拓を行う開拓団である。

 街に行ったユージとクールなニート、郡司、検証スレの動画担当の分は、すでに住人証明も発行されている。

 ほかのトリッパーも開拓団員として登録されているため、街に行けば随時住人証明を発行されるらしい。

 至れり尽くせりである。封建制における貴族の権力たるや。


 ちなみに開拓団長はユージで、クールなニートは補佐役だ。

 知らぬ間にユージが担がれていたが、トリッパーたちから反対は出なかった。

 ユージの家が基本だしな、などと言いながら、面倒な役を引き受けたくなかったのかもしれない。


「それももっともか」


「ああー、たしかに。こりゃ街に行くのはもうちょっと落ち着いてからかなー」


「いやいやいや、そこは行こうって! ぜんぶほっぽり出して全員で!」


 いつの間にか増えてきた仕事量と人員配置に頭を悩ませるクールなニートとミート。

 それでも街に行きたい、と主張したのはコテハンなしの名無しのニートだ。

 だが、行きたがっているのは彼だけではない。


「この前は動画担当だったし、今度は俺が撮影を……」

「ワイバーンの皮を売却したお金でストリートチルドレンを保護しましょう!」

「お前それ男の子も入ってるんだな? 幼女だけじゃねえな?」

「そこは獣人さんだろ! ほら人手が足りないんだし獣人さんの奴隷を買おう!」

「郡司先生、なんとか言ってやってください……」


 というか、ユージとクールなニートと名無しのミートが意外に冷静なだけで、トリッパーたちは全員街に行きたがっている。

 なにしろ、中世ファンタジー風異世界に来ることを望んでトリップした30人である。

 森を開拓して、ときおりモンスターと戦うだけで満足するわけがない。


「み、みんなすごいね」


「ユージか。みんなの気持ちはわかるんだがなあ……」


「次、次は俺を街に行く班に!」

「もうこれアレじゃない? みんな行きたいんだから、全員で行く?」

「クソみたいなニートから素晴らしいアイデアが!」

「いやもう俺たちニートとは言えないだろ。めっちゃ働いてるから」


「あー、みんな落ち着け」


 パンパンと手を叩いて、盛り上がりはじめたトリッパーたちを止めるクールなニート。

 ユージはちょっとうしろで、「おお、さすが」などと暢気に言っている。開拓団長。


「ひとまず、一度ケビンさんが来ることになっている。こっちに来てもらう人の話もあるし、商売の話もあるからな」


「そっか、服はケビン商会と一緒に作って売るって」


「そうだユージ。いずれにせよ、打ち合わせが必要なことは多い。次にケビンさんが来た時に、俺たちが街に行くことも相談しよう。だが、全員で行くのは現実的じゃないんじゃないか?」


「そうかな? ウチの謎バリアがあるから、荷物は庭に入れちゃえば留守にしても大丈夫だと思うけど」


 ユージ、暢気な発言である。

 まあ実際トリッパーたちが来るまでは、ユージはアリスとコタローを連れて外出し、家を留守にすることも多かったのだが。


「だがユージ、ケビン商会には全員泊まれないだろう? 全員で行くとなれば、道中の集団行動も大変だ。ここにはモンスターが出るのだから」


「あ、そっか」


「いずれにせよ、ケビンさんが来てからにしよう。それほど先の話ではないし、街に入れることは確定しているんだ。みんな、焦らず待ってほしい」


 クールなニートの言葉に、思い思いに了解の意の言葉を返すトリッパーたち。

 なんだかんだ素直である。流されやすいとも言う。



 ともあれ。

 稀人であるユージとトリッパーたちは、開拓団という扱いでこの地にいること、街に入ることを認められた。

 いつ誰がどのように、はこれからだが、全員で、あるいは何人かずつ街に向かうことになるだろう。

 いずれにせよ、住人証明は全員もらう必要があるのだ。

 街に行くことは必須なのである。

 とうぜん、変態たちも。


 ユージがこの世界に来てから、三年目の春の終わり。

 間もなく迎える初夏、そして夏は、大騒ぎになりそうだ。

 30人のトリッパーたちが、中世ファンタジー風異世界に解き放たれるのだ。

 稀人の自由を認めた領主夫妻のせいである。

 あと300年前のチートハーレム稀人。


6/25が『10年ごしの引きニートを辞めて外出したら④』の公式発売日なので、

明日も更新するつもりです!

ということで次話、6/25(日)更新予定!

時間は18時から遅れるかもしれません。

※6/25追記 更新、日付変わると思います……

 ほんと、過去はよく一年以上も毎日更新やれたもので我ながら信じられません。


6/25発売『10年ごしの引きニートを辞めて外出したら④』、特典情報が公開されました!

活動報告に詳細をアップしております!

今巻もよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] 街までの移動がネックだなぁ
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