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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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94 みんな欲しがる、焼きたてふわふわパン

いつも見て頂き、ありがとうございます。


最近、信じられない様な誤字が……。

へこみました……。濁点については病気なので諦めてますが。


皆さまの、報告、ありがたく頂戴しております。





 2次発酵させ20分焼くと、ついに柔らかいパンが出来た。日本では、どこにでも売ってる様な、ただの柔らかいパン。

 だけど、本当の意味で1から手作りだ。リンゴの酵母作りから、約1週間……長かった。本当に長かった。



「……出来たのか?」

 オーブンから取り出して、焼き具合を見ていると、パンの焼けた香ばしい匂いと、皆の息を飲むような静かなため息に、エギエディルス皇子が見に来た。焼き上がるまで、食堂の隅で本を読んでいたのだ。

「いい感じに出来たよ?」

 合計6個の、バゲットもどきなパンが出来た。ちなみに、りんごと水ではなく、りんごと砂糖水で酵母を作ると食パンみたいに、ふかふかのパンが出来る。今回はりんごと水なので、バゲットもどきだ。それでも普段のカチカチパンより、断然柔らかい。


 とりあえず、フェリクス王達の分と自分の分しかないので、魔法鞄(マジックバック)の中にしまっておく。王達には、絶対に焼きたてを食べさせたいしね。

 パンをしまっていると、皆は口にこそ出さないがしまうの!? って顔をしていた。たぶん、皆で分けて食べるんだと、思っていたに違いない。



 数が少ないのだから、そこは空気を読んでね?



「エド、味見してみる?」

 もちろん、味見は味見。エギエディルス皇子の分は、さっき自分で成型させた分をちゃんと、別にあげる予定。可愛いからね。

「…………っ」

 エギエディルス皇子が、何かを言いかけた瞬間、

「皇子には、味見はいらないと思いま~~す!」

「自分の分がある人は、味見しないでいいと思いま~~す!」

 見習いの子達が、手を挙げて言ってきた。

 どうやら、味見させるぐらいなら自分達にと、思ったらしい。

 そもそも、なんでもかんでも、作った物をあげませんよ?

「「…………」」

 エギエディルス皇子と、莉奈は顔を見合わせ、苦笑いした。

 皇子相手に、よく言う様になったな……と、同時に食べてやるという気迫がスゴかったのだ。



  ……ハイエナこと、モニカは目が怖いし。



「エド無視していいから……私の分を、味見用に半分あげるね?」

 ちなみに、私は王達にあげた残りを貰いますけど? なにか?

「い……いいのかよ?」

 エギエディルス皇子は、言いながらも少し怯えた様だ。

 だって、周りにいる人達の皇子に向ける目は、正直どうかしていると思う。エギエディルス皇子は、王族ですけど……? そしてまだ、子供なんですけど? そんな睨み付ける様な目で見ないでくれます?

「エドは、皇子様なんだから、ドシンとせい!!」

 と、エギエディルス皇子の背中を軽く叩いた。

「……いっ……ばか力だし!!」

 とよろめいてみせる。



 大袈裟だし、失礼な子だ。



「言っとくけど、パンは6個しかないし、陛下達に渡したら、なんも残んないよ?」

 いつまでも、皆がジッと見ているので、莉奈はきっぱり言った。

 まぁ、1個くらいなら、誰かにあげてもいいけど。

「なんでよ? フェリクス陛下、シュゼル殿下、エギエディルス殿下、リナの4人でしょ? パンは6個なんだから、2個余るじゃない」

 と指を折り、数えながら文句を言ってきたのは、ハイエナのモニカだ。

「……なんで、1人1個って決めつけるのかな?」

「……え、だって……」

「私の体型見て、何か思わない? 1個じゃ足りないなって」

 痩せたには痩せたけど、まだぽっちゃりだ。

 もう、自虐的だが、黙らせるにはそれしかない。


「「「………………」」」

 もれなく、全員が納得して黙りました。



 ……自分で言っといて、なんだけど……。

 黙り込むのって、スゴい失礼じゃない?

 そこは "そんな事は" って、言うのが優しさじゃないの?



 ……おーーーいっ!!




 

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