92 モニカの呟き
「じゃがいも、濾したら入れていいの?」
「いいよ~~」
と莉奈が言えば、ザルで濾したじゃがいもを、各々寸胴に入れた。
「私……砕けたじゃがいも……好きじゃない」
その瞬間、ボソボソと背後から呟く声が1つ。モニカだ。
「食べなきゃいいんじゃない?」
だれも、無理して食べろとは言ってはいない。クリームシチューの時もそうだけど、文句は言うけど、どうせ食べるに違いない。
「…………」
……うっわ、出たよ無視!!
コレ、絶対に出来たら食べるでしょ!!
「んじゃ、次は、さっきの炒めた たまねぎに、小麦粉を入れて軽く炒めて下さいな」
「小麦粉を入れて、炒めるのかい?」
リック料理長が訊いてきた。
「この間作った、ホワイトソースを作るの」
そう、この方法で作った方が、ダマになりにくく、なめらかに仕上がるのだ。
「方法が違うんだね?」
料理人としては、何故違うのか気になるらしい。
「用途によって、それにあった簡単な方法で作るの」
グラタンの時は、具材を炒めた後に、小麦粉を入れて作れば、失敗知らずだ。簡単だし適当にでも出来る。
「へぇ~。なるほど」
そういうと感心した様だ。
「粉っぽさがなくなるまで炒めて、まだ粉っぽかったら少しバターを足して、炒めてみて」
「「「は~~~い」」」
スープにする分の小麦粉を入れて炒める。粉っぽさが残らない程度に炒めれば、とりあえずはいい。
「うん、いい感じ。次は、そのまま1人は炒めたままで、もう一人が牛乳をゆっくり注いでいって……」
これで、ゆっくりかき混ぜながら仕上げれば、ホワイトソースは完成する。皆は言われた通りに、炒めている横からゆっくりと牛乳を注いだ。これ実は、多少ドバッと牛乳を入れても、大丈夫なのだ。
小麦粉とバターだけで、炒めて作る場合は、牛乳をゆっくり入れながらではないと、ダマになりやすい。だけど、具材を炒めた所に小麦粉を入れてから、牛乳を注いでくとドバッと入れても、ダマになりにくいのだ。なんでだろうね。
「私……ミルク煮……好きじゃない……」
モニカがまた、ボソボソと呟いた。
あなた、そう言っといて結局、牛乳のたっぷり入ったシチュー食べましたよね?
「じゃあ、寸胴に5カップの牛乳と、そのホワイトソースを入れて、よくかき混ぜて」
まぁ、牛乳は好みだろう。ミルク感が好きならたっぷり入れればいい。じゃがいもらしさを残したいのなら、なめらかにする程度に入れればいい。
「あぁ~」
と牛乳を入れれば、モニカがまた残念そうに呟いた。
……ねぇ? どうせ食べるんでしょ?
黙っててもらえませんかね?




