80 魅了のクレープ
あはは……。飴色たまねぎ作るの、メチャクチャ大変だよね。
莉奈は必死にたまねぎを炒めている、見習いを見て笑っていた。ちなみに、そんな莉奈の様子を見ていた料理人達は、後に魔女の様だった……と語る。
「エド。ハイ、お待たせ」
待ちくたびれていたであろう、エギエディルス皇子に、出来立てホヤホヤのクレープを出した。
「……おぉ!!」
エギエディルス皇子は、小さく声を上げた。
クレープは、白い平らなお皿にのっている。2つにたたんだクレープに、少しかかる様にリンゴのコンポート。その横のミルクアイスクリームには、赤いククベリーのジャムがかかっている。
この間のミルクアイスクリームとは、また違ってスゴく豪華だ。
「それが、クレープか……」
罰ゲームこそ逃れたが、ご褒美がないリックがマジマジ見ていた。当然、他の人達も見る訳で、皇子の周りは軽い輪の様になっている。
「食べづらいから……向こうに行ってくれ」
と、シッシッと右手を振り追い出しにかかる。さすがに囲まれて、ジロジロされた中では食べられないらしい。
「…………」
気になるのか、皆は、無言でジッと見たままだ。誰一人移動しようとしない。無言の圧が皇子にかかる。
「ハイハイ……みんな、食べづらいから仕事に戻る。マテウスさん達のは、今、用意するからここで待ってて」
莉奈は手をパンパン叩き、エギエディルス皇子のデザートに釘付けの皆を引き剥がした。そんなに囲まれてたら、せっかくのクレープも味わえない。
「やった~~!!」
ご褒美が貰えると、確信したマテウス達は皇子とは少し離れたテーブルについた。
「クレーープ」
「ふぅ!!」
マテウス達はご機嫌な様子で小躍りしている。そんな姿を食べられないリック達は、恨めしそうに見ていた。




