79 罰ゲーム
結果、敗けたチームは隣で、マテウス達が優勝したのを思わず見て、ガッカリし手を休めた見習いチームであった。
莉奈はチーム配分を見て、えげつないなと思った。ベテラン、中堅、若手、見習い、といるわけだから、均等に分ければいいのに……そのままだった。そりゃあ差もでるよね。
「んじゃ、恐怖の罰ゲームを始めま~~す」
意気消沈している見習いチームに、高々と声を上げた。
罰ゲームなんかやらない莉奈はお気楽だ。
「マジで~」
「あ~」
なんだか、可哀想なくらいガッカリしている。酷い先輩を持つとそうなるよね。実力を均等にしないんだもん。
「まっ、勝負に負けた以上は仕方ない、諦めなさい」
「「「……は~~~~い」」」
莉奈が、そういうと諦めた様に返事をした。
「では、負けたみんなには……今、切ってもらったこの "たまねぎ" を、全部炒めてもらいます。」
そう、これが地獄なのだ。いつ終わるかもわからない地獄なのだ。
「……えっ?」
「全部……?」
「「「えぇ~~~~~!?」」」
自分たちが切った、山の様なたまねぎの量を二度見して叫んだ。600ものたまねぎのスライスだ。ウンザリするのも頷ける。
「ちなみに、炒めるといっても、ただ炒めるだけではダメだからね~」
と、注意はしておく。だってただの炒め物ではない。火を通すだけの作業ではないのだ。だからの "地獄"。
「どういうこと?」
見習い達が訊いてくる。炒めるは炒めるではないのか、と。
「このたまねぎが、飴色……つまり、キレイな茶色になるまで弱火で、ず~~~っと炒めてもらいます」
まぁ、始めはたまねぎの水分を飛ばすために、中火でもいいのだけどね。なんなら電子レンジがあれば、ある程度チンして、水分を飛ばしてから炒めると、早くていい……が、さすがに電子レンジはない。諦めて地獄を見てもらおう。
「茶色って……焦がすの?」
飴色たまねぎを知る訳もないので、わからないみたいだ。
「違いま~~す。焦げたら不味いので、弱火で焦がさないよう時間をかけて、ゆっくり……ゆっくりと炒めて下さい」
早く色をつけたいからといって、強火でやったら焦げて台無しだ。
「ゆっくりって……どのくらいかかるの?」
不安そうに見習いの子が訊いてきた。
"聞かぬが仏" という言葉がまさにあう。
「……1、2時間?」
だって、量が多いし。たまねぎの水分にもよるし。
アハハ……頑張ってね~~。
「「「……い、1、2時間~~~!?」」」
これには、負けた見習いチームだけでなく、全員が絶叫していた。たまねぎを1時間も炒めるなんて初めてなのだろう。
私は、絶対にやりたくない。
だから、頑張れ。
「ちなみに、焦がしたら殴るよ?」
楽して強火になんてさせないし、貴重な食材のムダなんてさせない。丹精込めて作った農家さんに失礼だ。
「……な……殴る……って」
料理人達は、色々な意味で絶句し、白目を剥いていた。




