74 面倒くさい
「そ……そんなにも、スライスするんですか……」
正気に戻ったリックが、なんだか敬語でボソリと呟いた。
オニオンスープと聞いて、たまねぎを使うまでは想像できたのだろうが、使う数が桁違いなのでビックリした様である。
「オニオンスープはたまねぎがメインだし、そのオニオンスープをベースにじゃがいものポタージュ作るから、600でも少ないかもね~」
自分は指示役に回る予定なので、他人事である。
「マジで~」
「600とか……ないから」
心の叫びが数名から漏れていた。
でも、本当の地獄はこれからなんだよね~。
莉奈は、どこか他人事の様にあさっての方向を見た。
「んじゃ、今日ここに居るのは何人かな?」
「2……28人? だったかな?」
莉奈の質問に、副料理長が答えた。ちなみに副料理長、マテウス32歳 独身だそうです。なかなかのイケメンなのに独身でしたか。
「なら、ラナ、モニカを足して30!! 丁度いいね」
莉奈は、1人で納得し大きく頷いた。
「いやいやいや………何が丁度いいのか説明してくれる?」
ラナ女官長が慌てた様に訊く。話の脈略がないからだ。
「600割る30は20!! 丁度いい!!」
「だから、なにがよ?」
ここまで言ってもわからないのか、わかりたくないのか、ラナはさらに訊く。
「たまねぎのスライス、1人20個だね?」
「え……は? ちょ、ちょっと!! なんで私達まで頭数に入れてるのよ!?」
やっと理解したのかラナが焦った様に言った。まさか自分もやる事になるなんて思わなかったのだ。
「スープ飲むんでしょ?」
「「………………」」
そう言われたら、二人は黙るしかない。飲むけど手伝いたくないなんて、皆が見ているこの状況で言う勇気もない。
「リナ……リナは何するの?」
モニカが、ハッと気付いた様に言った。その頭数に莉奈は入っていない気がしたのだ。
「スープに興味ないから、なんか違うの作るけど?」
なにか? と言う風に言ってみる。正直、その作業は面倒だし興味はない。
「「「……え?」」」
自由すぎる莉奈に、リック達は唖然であった。
「お前……自分で提案しといて興味ないとか、ンなのあるかよ?」
と呆れた様に言ったのは、エギエディルス皇子だ。作ると言ったのは自分なのに、興味ないってなんなんだ……と。
「……だって、スープ作るの面倒くさい」
これからやる事を、知っているだけに面倒以外の何物でもなかった。
「「「………………」」」
さらに、皆が押し黙った。その面倒くさい作業を私達がやるのですが?……と。
「……お前……自由すぎるだろ……」
エギエディルス皇子は、呆れ果てていた。
誤字、脱字の報告、ありがとうございます。
ものすごく助かります。
目が悪いせいか、頭が悪……ゴホン……。抜けてるところ、間違いが多いですね。お恥ずかしい限りです。
(;^ω^)




