73 たぶん、600は必要かな?
「じゃがいもとたまねぎが、いっぱいあるからそれを使ったスープにしようか」
ラナの恐ろしい鑑定を払拭する様に莉奈は声を出した。
だって今思えば、ラナの用意してくれている服はジャストサイズなのだ。絶対 "鑑定" されている。
「え~?また同じ野菜スープ?」
モニカが残念そうに言う。材料が一緒だからそう思ったのだろう。
「材料はたいして変わらないけど、調理法が違うから全く別物だよ」
そもそもスープなんて野菜を使う物が多い。この世界にはもってこいだ。
「どんなスープなんだ?」
エギエディルス皇子が訊いてきた。
「そうだな。たまねぎたっぷりオニオンスープと、じゃがいものポタージュスープにしよっか」
山程あるこの常備菜を使わない手はない。作るのが面倒ではあるがリック達がいるし安心だ。
「……マジで、いろんなスープがあるんだな」
スープと云えば、あの野菜スープ1択なのか、種類の豊富さに改めて驚いている様だ。
「ポタージュスープなんかメインを変えるだけでも、随分種類があるよ?」
この世界でどこまで作れるかは謎だけど。
「じゃがいもは勿論、ほうれん草、カボチャ、にんじん……色々あるね~」
莉奈は指折り数えながら説明する。なんだったら自分が知らないだけでもっとあるに違いない。
「すごいな……」
エギエディルス皇子は、改めてスープの種類に感嘆していた。
「よ~し。そうと決まればリックさん達に協力してもらおう」
莉奈は気合いを入れた。
「では、みなさん!! そこにある鶏コンソメをベースに、オニオンスープとじゃがいものポタージュスープを、作っていきたいと思います!!」
リック達が、鶏コンソメをマスターし、それがあるからこそのアレンジスープだ。リック料理長達には感謝しかない。
「リナ~!! ポタージュってな~に?」
料理人の女の子が手を挙げて質問をしてきた。
あ~~やっぱりそうきちゃう感じ?
私も詳しく知らないんだよね。
「え~と……ざっくり云うと、透明なスープを "コンソメ" それ以外の濁ったスープを "ポタージュ" っていうの」
正直言って私も詳しくは知らない。
だって作るのに、いちいち意味まで調べて料理なんかしないし。確か……そういう物だった、と云う認識くらいである。
なんだったら、鶏コンソメとしているスープだって、厳密に云えばチキンブイヨンだし。料理本に簡単コンソメスープって書いてあったから、そのまま言ってるだけ。素人の知識なんてそんなものでしょ?……詳しく訊かないで~。
「濁ったスープって何?」
1つ疑問が解消すれば、またの疑問が出てくる。コレを訊けばアレがわからん状態なのだろう。
めんどくさ~い。私もわかんないし~!!
「これから作るから、目で見て覚えて下さいな」
もう、それしかない。プロじゃないので何? どうして? の説明には答えられません。そういうもの 以上!
「では、これからたっぷりの "たまねぎ" をスライスして貰います」
キリがないので、先に進む事にした。すべてに答えられる訳ではないしね。
「たっぷりってどのくらいなんだ?」
リック料理長が、皆の代表の様に訊いてきた。莉奈は、周りを見てから王宮に働いている人、すべての人数分を考えてゾッとした。大丈夫なのかな……と。
「……600?」
「「「「「ろっぴゃく~~~!!?」」」」」
絶叫に近い声が、厨房に響き渡った。だって両方のスープに使うし、オニオンスープにはたっぷり入れたいし、人数的にも最低は600は必要だろうと思う。それでも全然足りないかもしれない。
今回はお試しって事で、このくらいの量からやってみようと思う。
アレ? なんか皆が、白眼剥いてて怖いんですが?
結局……あまりの数に、正気になるまで数分掛かったのだった。




