71 日替わりスープ
「……ヒマなの?」
相変わらずの朝が来た。
「暇じゃないし。なんだったら用あるし」
ジョギングを終えて戻ると、エギエディルス皇子が優雅に紅茶を飲んでいた。
「用って?」
「リナが、食事の改善してくれてるから、兄上達が厨房と食糧庫にある食材を好きにしていいってさ」
「マジか」
それはありがたい。もうすでに勝手にしている感じたっぷりだが、許可があるのとないのとでは段違いだ。
「だからって、コイツらだけで食い潰すのはないけどな」
とモニカを特に見て言った。エギエディルス皇子はよくわかっていらっしゃる様だ。莉奈も許可が出たとはいえ、ムダに使ったりするつもりも、皆に振る舞うつもりもない。
「…………」
モニカは複雑そうな顔をしていた。
「……だけど、リナが作ってくれてるお陰で、ご飯が楽しみになってきたわよね」
ラナ女官長がしみじみ言う。今まで、そんなにご飯は楽しみな時間ではなかった様だ。
「確かに、私、もうあのスープは飲めません」
モニカが続いた。
「俺も……」
エギエディルス皇子もみたいだ。
「とはいえ……それもそのうち飽きるよ?」
莉奈は、モニカの淹れてくれた紅茶を飲みながら言った。
「「「…………えっ?」」」
莉奈の言葉に3人共驚いた。飽きるはずがないと思うからだ。
「人間って結局、贅沢な生き物だから……二種類のスープだけじゃ飽きると思うよ?」
それが毎日となると、たぶん飽きてくる。味噌汁なら具を変えてと変化があるし、慣れてるせいか飽きない自信があるけど。鶏コンソメの野菜スープが毎日……自分だったら飽きる気がする。
「そうかな?」
とモニカ。飽きるイメージが、まだないのかもしれない。
「今はまだ、目新しいから感じないかもだけど、そういうもんだよ」
「……そうか」
エギエディルス皇子は、小さく頷いた。毎日同じメニューでは確かに飽きてくるかなと思ったらしい。
「……と、いう事で……スープが毎日、替わったら嬉しくない?」
「「「……嬉しい!!!」」」
3人がハモった。
「基本の野菜スープは毎日あるとして、日替わりスープと選べたらどうかな?」
「「「……それいい!!!」」」
またハモった。莉奈の提案に異論はなさそうだ。
「毎日、違うスープなんか出せるの?」
ラナが興味深く訊いてきた。今までが今までだけに、毎日違うスープは想像外なのだろう。
「今すぐって訳にはいかないけど……」
「いかないけど……?」
「徐々に増やしていけば、近いうちに出来るんじゃないかな?」
材料的には、ありそうだし……後はリック料理長達の頑張りにかかる訳だけど。一度見ただけで、鶏コンソメを作ったのだから大丈夫でしょう。




