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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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68/669

68 1人2ヶです

夕食前に執筆していると、晩御飯とは別に何かを口にしたくなります。

揚げ物……揚げ物が食べたい。






 鶏肉を次から次へと、リック達と揚げていた。

 揚げ物の匂いが、厨房、食堂に広がる。

 入って来る警備兵、警護兵は、まずは食堂の旨そうな匂いに顔がニヤケ、次に先に食べている同僚の料理にわくわくし、そしてフェリクス王達に気づき、ガクぶるすると云う行動を皆がしていた。


 リック達は、先日、莉奈が作った鶏のコンソメスープをすでにマスターしていて、野菜スープが出来ていた。作業的に簡単だとはいえ、1度見たあのスープを、完璧に作っていたのには驚きだ。

 たぶん、徹夜に近い作業をしていたに違いない。莉奈はリック達に頭が下がる思いだった。



「ねぇねぇ、リ~ナ~?」

 昼食を食べに来ていた警備兵のアンナが、食堂の小窓から顔を出した。

「なにかな?アンナ」

「この、からあげ? すっごい美味しいんだけど!!」

「そりゃ、よかったね」

「おかわり!!」

 アンナはからあげの のっていた小皿を莉奈に渡す。

 1人1枚分もない鶏肉は、なるべく多くの人に食べて貰える様に……と6等分され、からあげは1人2ヶずつとなっていた。

「……ないよ」

「なんで~!! そこにあるじゃん!!」

 揚げあがったからあげが、バットにおいてあるのが見えたらしく指をさす。だが、これはおかわりする人の物ではなく、後から休憩に入る人のだ。

「1人2ヶずつだよ」

「えーーーーーーーーっ!?」

 うるさいくらいの長いブーイング。

「それともアンナ、キミは1人ではないのかな?」

「…………え?」

「1頭とか1匹とか?なんだったら1ガロス?」

「…………ガロ……ス?」

 ガロスってナンダ?と固まる。

「人間様1人に付き2ヶとなっています。人間でない方は申請書を持って来て下さい」

「…………っ!?」

 ……申請書!?

 そこまで、言われたアンナは反論する気も削げ、とぼとぼと戻っていった。ちなみにこのやりとり、5回目だった。

 からあげは想像以上に大反響で、おかわり続出。でも、莉奈はぶれず全て追い返していた。

 フェリクス王に、反論出来る莉奈に勝てる人など、警備、警護兵にいる訳もなく皆、撃沈だ。



「リ~ナ~。食べ終わりましたよ~」

 すっかり忘れていたが、食堂の端には王族様御一行がいた。

 騒がしくしていた皆も、シュゼル皇子の声にハッとし、ピタリと静かになった。

「はーい!! 少々お待ち下さい」

 莉奈は、リック達にからあげを任せ、シュゼル皇子達の食後のデザートを準備していたのだ。

「アイスクリームのククベリーがけにございます」

 甘い物ギライのフェリクス王以外の前に、ククベリーで作ったジャムをかけククベリーを数粒ちらした、アイスクリームをコトリと出す。一応、飾りは一流レストラン風に華やかに仕上げてある。


「「「「………………」」」」

 シュゼル皇子達は、その見たことのない華やかなデザートに言葉を失っていた。

「……早く食べないと溶けますよ?」

 そんな雰囲気の中、莉奈は至って冷静だった。

 しかし、シュゼル皇子達が、あまりにも感動している雰囲気を察した警備兵達は、首を伸ばしたりゆっくり近づいたりして、一目見ようと奮闘していた。アイスクリームとはナンダ? と気になるのだろう。

「……フェリクス陛下は、甘い物はお好きではないらしいので "酒の肴" 用にからあげとカリカリチーズを、御用意させて頂きました」

 と、昼食とは別にからあげとカリカリチーズを出した。時間があったら、もっと違う物も用意出来たのだが、あっちこっちと見ながらだったので、こんな物しか用意が出来なかった。

「…………礼を言う、リナ」

 フェリクス王は、至極満足なのか口端を弛めると、その2品を魔法鞄(マジックバック)に入れて、ビクビクと敬礼する警備、警護兵を横目に食堂から出て行った。



 長身だから、歩いているだけでもカッコいいな……。



 莉奈は、スラリとしたフェリクス王の後ろ姿に見惚れていた。



 

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