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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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653 何故、そっちに食いつく?



 モルテグルの町も、基本的に国境の町マヨンと変わりはないみたいだ。

 防壁は土壁だし、その上を兵士達が歩いている。所々に監視塔があるのも変わらない。門扉の両サイドにも、入管場を兼ねた監視塔が立っているし、この造りはポピュラーなのだろう。



 莉奈が物珍しく見ていれば、門兵が声を掛けてきた。

「なぁ、アンタがさっきあそこに出した箱、アレは何だ?」

「え?」

「あの長細い箱だよ」

 と防壁の外に並んでいる箱を指差した。

 莉奈がテーブルをセッティングする前に出した、トイレや洗面所が気になるみたいである。



「あぁ、トイレと洗面所の事ですか?」

「は?」

「右が女性用、左が男性用ですね」

「「「トイレ!?」」」

 旅にトイレを持参する者など、普通はいない。

 恥ずかしさはあるが、大抵の場合は男も女も草むらか木の陰で用を足す。それが旅の常識である。なのに、当たり前の様にトイレや洗面所を設置していた莉奈に、門兵達は目を丸くさせていた。



「ちょっと見て来てイイか?」

 気になるのか門兵が1人、皆に同意を求めていた。

 職務中なのは分かっているが、あのトイレを見られるのは今しかない気がする。何時間もサボる訳じゃないし、少しくらいイイかなと、皆を見る。



「俺も一緒に行く」

 好奇心を抑えられなかった門兵がもう1人、トイレの誘惑に負けた。

 莉奈がトイレだと言うのだから、絶対にトイレなのだろうが、持ち歩くトイレはどんなトイレなのか気になる。

「検査をさせていただきますね」

「はあ……?」

 今さら、検査だなんて言われても、誰が信じる。

 ていよく理由を付けてトイレに向かう門兵達に、莉奈は気のない返事を返した。トイレなんか見て何が楽しいのか、莉奈にはサッパリだ。



「アイツら、何だって?」

 肉を配りに行った莉奈を心配して、エギエディルス皇子が近くに来てくれていた。

「検査だって」

「トイレを?」

 エギエディルス皇子にも理解出来ないのか、トイレに行く門兵を見て眉根を寄せていた。

 出した時なら未だしも、今さら感たっぷりだ。

 それに、検査と言いつつ、緊張感がなさすぎる。あれは絶対に、ただの好奇心だろう。



「お前、トイレに何か仕掛けたのかよ?」

「仕掛ける訳ないでしょう!?」

 トイレに花なんて飾る莉奈の事だから、他にも何か変なオプションでもあるのかとエギエディルス皇子は思ったらしい。

 仮に仕掛けるとして、それは誰を貶める罠なのか。

 フェリクス王も使うトイレに罠なんか仕掛けたら、命が危ない。



「「……は?」」

 莉奈達がそんな話をしている中、トイレを開けた門兵達が絶句していた。

 何せ、トイレにお金を掛けられるのは、金のある者だけだ。

 一般的な家に普及されているのは、基本的にボットン式。そこから裕福になれば、スライム式に変わる。最悪は便座すらなく、ただ穴が一つ空いているだけのトイレだ。

 当然、ボットン便所なので臭いは言わずもがな。しかも、穴を外す者もいるから、無法地帯である。



 内心、どうせ穴が空いているだけのトイレだろうな、と思っていた。

 なのに、近付いてもあのボットン特有の臭いがしない。そこでまず驚いていたのに、開けたら清潔感しかない便器がドスンと鎮座していた。

 しかも、このトイレは便器だけでなく、その上に木の板で造られた便座がある。中を覗けば、ポヨンとした物体が見えないのだから、スライム式ではない。

 代わりに便器の内側に、色の付いた魔石が埋め込まれているのが見えた。となると、コレは"浄化魔法"が設置されている超最新式トイレで間違いないだろう。



「「……マジか」」

 門兵達の驚きを隠しきれない声が、莉奈達にも聴こえた。

 期待した訳でなく、ただの好奇心で見に来ただけなのに、想像以上で思考が止まっているらしい。

 見学しに行った門兵達が固まっていると、他の門兵や防壁にいた兵士達もざわつき始め、ゾロゾロと列をなしてやって来た。



「え? なんで、旅用の便所がウチの詰所のより綺麗なんだよ」

「何なら、ウチの家のトイレより豪華なんだけど?」

「これ、詰所に欲しい」

「えぇ!? トイレに花って……」

「ヤバいって!! 隣にある箱、小さな風呂ハマムみたいなんだけど!?」

「うっわ、お湯が出るし」

「魔石をふんだんに使ってるし」

「トイレがイイ匂いするって何?」



 トイレと洗面所に、ワイワイガヤガヤと皆が群がっている状況に、デザートを食べていたアーリャ達も何事かと訝しんでいた。

「確認して来ます」

 あの箱の正体を確認すべく、護衛の1人がアーリャに断りを入れ、トイレに向かって行く。

 あれだけ人が集まる中、驚きと困惑する声は聞こえて来たが、不安な声はない。危険性はないと判断は出来るが、一体何に驚き戸惑っているのか護衛には分からなかったのだ。

 アーリャも気にしている様だし、万が一も考え、確認しに来たのである。



「え?」

 護衛が人混みを掻き分ける様にして中を覗けば、そこには白い便器が見えた。

 どうやら、木や岩石製ではなく、陶器製の様に見える。食器同様に、陶器製かと思うと複雑だが、木製より清潔そうだし、岩石より加工しやすそうである。

 それだけでも十分驚愕ものなのに「浄化魔法式なんですよ」と門兵達が言うものだから、唖然だ。

 隣国のヴァルタール皇国がこんなにも、最先端な国だと知らず、カルチャーショックを受けるのだった。







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