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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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651 食わず嫌いとは?



 外交の場では、戸惑いや驚きなど、感情を表に出すだなんてしてはならない事だ。しかし、アーシェスがいる事で気が緩んでいた。それを差し引いても、莉奈の言動が予測不可能過ぎて、アーリャの頭や表情は休む暇がない。



「いや、食べるって……魔物を!?」

「アーリャ様、食わず嫌いは良くないですよ?」

 アーリャがさらに戸惑っていれば、莉奈はまるで子供を諭す様にダメ出しする。

「え? 食わず嫌いって、えぇ!?」

 "食わず嫌い"。

 その言葉は、肉や魚、野菜とかに対して言う言葉だと思っていた。

 だが、莉奈はサラッと当然の様に、魔物に対しても言う。アーリャは食わず嫌いの範囲の広さに、もはや唖然である。



「いや、あのお嬢さん」

 静観を決め込んでいた護衛達も、莉奈の物言いには思わず反論したくなった。

 ヴァルタール皇国では知らないが、魔物を食べるのは一般的ではない。

 むしろ、どこの国も大抵の場合は、瘴気に晒された変異した生き物を食べるのは、禁忌とも言われている。

 それを食わず嫌いで一蹴されては、何とも言えない。



「「"魔物"だぞ!?」」

「美味しいんですよ!?」

 護衛2人の言葉に、上から喰らいつく様な莉奈の即答に、護衛2人は呆気なく撃沈。

 もはや、ぐうの音も出ないとはこの事だ。

 現に先程食べていた本人が言うのだから、説得力の塊である。



「……そうだな」

 莉奈の言葉に感化され、譲歩し始めたのはアーリャだった。

 食料確保はもちろん大事だが、確かにイイ匂いだったのは否めない。ならば、食べてみようと思ったのだ。



「とりあえず、食べてみない事には」

「「アーリャ様、毒見は我々が致します」」

 そもそも、兵士達の前だと断っていたアーリャだったが、その兵士達のためにも食料は必要だ。

 だが、食べさせる前に本当に食べられる物なのか、まず自分が確認するべきだ。そう言うアーリャと、主に訳の分からない物は食べさせたくない護衛2人が声を上げた。



「毒見ねぇ、ただあなた達が食べたいだけじゃないの?」

 タンバルエリゼの飴を、パリパリとフォークで割りながら、アーシェスは白々しいと呟く。

 安全かどうかなんて、すでに莉奈達が食べていたのを見ていたのだから、分かりきっている。

 しかも、莉奈がアーリャに害をなす可能性がない以上、ただ食べたいだけの様にしか、アーシェスには見えなかった。



「「違います!!」」

 肉がチリチリと焼ける音と共に、焼けた脂が白い煙となって、鼻を襲撃して来れば、肉好きには堪らない。

 鼻の奥には、あの肉達の焼けた匂いがまだ残っている気がするくらいだ。

 食べたい気持ちも正直なところあるが、毒見が必要なのも本心である。だが、護衛という建前があるので、2人は無表情を貫き通す。



「では、魔物肉をお召し上がりになると言う事で、とりあえず、今お出ししたデザートは一旦、下げさせて頂きますね?」

 アイスクリームが載っているので、溶けたら美味しくない。

 そう思って莉奈がアーリャ達の皿を取り下げれば、「あ」と残念そうな顔をするからつい笑いそうだった。

「肉を食べた後に、またお出し致します」

 言わなくても分かっているかもだけど、一応言っておこうかなと思わせるくらいに、ガッカリ感が表情に出ていたのだ。



「肉の試食なら、ロックバードのからあげは外せないだろ」

 莉奈が味見用の肉を魔法鞄マジックバッグで探していれば、エギエディルス皇子が桃の紅茶をおかわりしていた。

 エギエディルス皇子的には、ロックバードのからあげは鉄板らしい。

 確かに、ロックバードのみならず、鶏のからあげは不動の人気である。



「牛系も美味しいですよ? 焼き肉なんて毎日でもイイ」

 とはローレン補佐官だ。

 余程に焼き肉パーティが気に入ったのか、満足そうにニコニコしている。

「焼き鳥にエール、白ワイン」

 フェリクス王は現在、断酒状態なので、酒中心のメニューに思いを馳せているみたいだ。

 酔い覚ましに魔物討伐に行けるくらいの強者なのに、人の命を預かる立場になると、途端に酒を一滴も飲まないその姿勢。莉奈は、そんなフェリクス王のために、何か美味しい物を作ってあげたいなと思うのだった。



「とりあえず、右から、ロックバード、ブラッドバッファロー、ヒュージャーピッグの串焼きになります。串に刺してありますので、そのまま手に取りお召し上がり下さい」

「「「……」」」

 細長い皿に並べた串焼きを出せば、先程の焼き肉とは違う趣きを感じた。

 焼き肉は自分で焼く楽しさがあるが、串焼きは串を手で持って齧りつく楽しさがある。どちらにせよ、肉好きには堪らない料理だ。



 とりあえず、アーリャ達は初見というのもあり、莉奈はクセの少ない肉を用意した。

 肉の味をダイレクトに感じて欲しいので、炭で炙り焼きした串焼き肉。

 ロックバードは言わずもがな、脂も程よくのっていて鶏肉より美味しく万人受けしやすい。

 ブラッドバッファローの肉質は牛肉と似ていて、肉を食べたという満足度はかなり高いだろう。

 ヒュージャーピッグは、豚肉そのもの。しかも、脂身を焼き過ぎかというくらいに焼くと、香ばしくて美味しくなる。

 どちらかと言うと、ボア・ランナーの方が見かけやすくポピュラーなのだが、ボア・ランナーにはちょっとクセがある。なので、クセがほとんどないヒュージャーピッグの方が食べやすいと思う。



「「「……」」」

 アーリャ達は食べると言ったものの、いざ目の前に出されると勇気がいるらしい。

 互いにチラチラ見ながら牽制し合っているから、笑える。



「まぁ、初めはちょっと躊躇いますよね」

 ローレン補佐官は、自分もそうだったなと、ただの感想を口にしただけ。

 だが、護衛2人は武官であるローレン補佐官に、怖気付いたのかと鼻で笑われたと、勝手に勘違いしたらしい。

 ヴァルタール皇国の武官に笑われたとなれば、護衛として廃ると、アイコンタクトでもしたかの様に、2人は串を手にした。







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