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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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65/669

65 いいから、作れ



「……おい」

「え~と……リナ?確か短時間と……」

 フェリクス王はますます不機嫌に、シュゼル皇子はそんな兄を無視してのんびり訊いてきた。

「目安ですけど……?」

 しれっと言ってみる。

 だって、最後まで話を聞かなかったのシュゼル皇子だし~。

「……シュ~ゼ~ル」

 地鳴りの様な声が聞こえた。

「………………え、え~と、ちなみに一気に固めてはダメなんですか?」

 その声に、シュゼル皇子は少し焦った様に言った。

「美味しくありません」

 一気に固めれば、ガリガリ、シャリシャリして舌触りがすごく悪い。原材料に、先にマシュマロを溶かして、入れておけば一気に冷やし固めても大丈夫らしいが。

 まずマシュマロがない。そして、そのやり方で作った事もない。

 ないないづくしで、出来る訳もなく却下だ。

「…………」

 シュゼル皇子は、一瞬時を止めた。

 そして、何かを振り切ったのかパンパンと手を叩いた。

「さぁ!! 皆さん、頑張りましょう!!」



「「「………………」」」

 時間がかかっても、作る気らしいシュゼル皇子に唖然である。

「……てめぇ…一人で混ぜながら冷やせばいいだろうが」

 そもそもアイスクリームに興味のないフェリクス王はとばっちりだ。

「……そんな器用な事、出来ませんよ?」

 と、ニッコリ微笑むシュゼル皇子。

 いや、たぶん出来る……と莉奈は思った。ただ、大変だし時間がかかる。だから敢えてやらないのだろうと予想してみる。

 そして、絶対、絶~対口には出さないが……フェリクス王なら一人で余裕で出来るのでは……と、確信していた。

「この国 随一の賢者が……か?」

 と、フェリクス王が睨んで見れば

「所詮、非力な魔法使いですよ?」

 と、シュゼル皇子はニッコリ微笑む。



 どうでもいいから、早くしろ。



 莉奈が、皆がそう思ったに違いない。

 そして、ナゼか王弟以外の視線が莉奈に集まった。



 お前なら、打破出来る……と。





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