65 いいから、作れ
「……おい」
「え~と……リナ?確か短時間と……」
フェリクス王はますます不機嫌に、シュゼル皇子はそんな兄を無視してのんびり訊いてきた。
「目安ですけど……?」
しれっと言ってみる。
だって、最後まで話を聞かなかったのシュゼル皇子だし~。
「……シュ~ゼ~ル」
地鳴りの様な声が聞こえた。
「………………え、え~と、ちなみに一気に固めてはダメなんですか?」
その声に、シュゼル皇子は少し焦った様に言った。
「美味しくありません」
一気に固めれば、ガリガリ、シャリシャリして舌触りがすごく悪い。原材料に、先にマシュマロを溶かして、入れておけば一気に冷やし固めても大丈夫らしいが。
まずマシュマロがない。そして、そのやり方で作った事もない。
ないないづくしで、出来る訳もなく却下だ。
「…………」
シュゼル皇子は、一瞬時を止めた。
そして、何かを振り切ったのかパンパンと手を叩いた。
「さぁ!! 皆さん、頑張りましょう!!」
「「「………………」」」
時間がかかっても、作る気らしいシュゼル皇子に唖然である。
「……てめぇ…一人で混ぜながら冷やせばいいだろうが」
そもそもアイスクリームに興味のないフェリクス王はとばっちりだ。
「……そんな器用な事、出来ませんよ?」
と、ニッコリ微笑むシュゼル皇子。
いや、たぶん出来る……と莉奈は思った。ただ、大変だし時間がかかる。だから敢えてやらないのだろうと予想してみる。
そして、絶対、絶~対口には出さないが……フェリクス王なら一人で余裕で出来るのでは……と、確信していた。
「この国 随一の賢者が……か?」
と、フェリクス王が睨んで見れば
「所詮、非力な魔法使いですよ?」
と、シュゼル皇子はニッコリ微笑む。
どうでもいいから、早くしろ。
莉奈が、皆がそう思ったに違いない。
そして、ナゼか王弟以外の視線が莉奈に集まった。
お前なら、打破出来る……と。




