表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/669

63 萌えを返せ



 ダメだ……もう、ダメだ……。



 リック達は、白目を剥きながらその場に座りこんだ。

 助けたくても助けようがない。ダメだ…と諦めたのだ。



「……迷惑……」

 フェリクス王は、下を向いてそう呟いた。

「……あの~?」

 今さらだが、謝ろうかな…と莉奈は思った。なんか肩が震えていて怖かったのだ。さすがに斬られるか?

「……邪魔……」

「えっと……も……」

 謝ろうと、さらに声をかけた時…莉奈は、何かがおかしいと気づいた。




 ……くっ……くっ……。




 フェリクス王は、笑っていた。

 怒りに震えていたのではなく。ただ、声を押し殺して笑っていた。



「………………」

 莉奈は、呆然とした。

 さすがに、首が飛ぶかも……と覚悟していただけに唖然である。

「……この、俺に向かって……よく言えたな?」

「すみません?」

 と、可愛くもないだろうが、首を傾げた。

「知ってるか?……この国は、王に不敬を働けば極刑もありえるんだぞ?」

「……私の世界でも、そうですよ?」

 なんだったら、自分だけでなくその家族まで命が危ない国もある。守る家族もないし、完全に自己責任になるからどうでもいいけど。

「お前……アッチでもそうなのかよ?」

 さらりと言った莉奈に、フェリクス王は少し驚いた様子だ。

「言う以前に、王族に逢う機会がありません」

 ただの一般人が、王族なんかに逢えるはずがない。

「……はぁ……」

 呆れたのか何だか分からないが、フェリクス王はため息をついた。

「度胸があるのか……ただのアホなのか」

 ん? アホは余計ですが?

「血の気の多いヤツもいる。気をつける事だな……」

 そういうとフェリクス王は立ち上がり、莉奈の頭にコツンと軽くげんこつして出入口に向かっていった。

「…………」

 莉奈にしか見えなかったが、頭を叩いたフェリクス王は、その風体から想像も出来ないくらい、優しく優しく微笑んでいた。



 ……キュン。



 ダメだ……。



 この表情(かお)……不意打ち過ぎて、腰が砕けそう。



 ……これが、ギャップ萌えか。初めて知った感覚に、莉奈はドキドキしていた。弛みそうな口を押さえ、ふにゃふにゃと砕けそうな腰を踏ん張って堪えていると、背後から空気の読めない……読む気のない声が一つ。



「アイスクリームは?」



 欲求、欲望に素直なシュゼル皇子の声だった。



 …………おい。



 私の萌えを返せ。




 莉奈の心はスッカリ冷めた。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ