586 とりあえず【鑑定】しよう!
【マルガイラ】
亜高山から草原、砂漠、森林、海岸などに幅広く生息する。
単体行動する事は少なく、常に群れでいる事が多い。
〈用途〉
皮や翼は撥水性が高く、装備品や雨具に向いている。
鋭い爪は加工して装飾品や装備品に使用可。
〈その他〉
食用ではあるが、やや肉付きが悪い。
【ジャッカルンロープ】
海岸地帯から林野、牧草地、山岳地帯など食物となる植物が豊富で、隠れる場所の多い林や草原に好んでいる事が多い。
基本的には夜行性で、昼間は岩陰やヤブの中で休息している。
〈用途〉
鹿に似た角や骨は、装飾品や装備品に使用可。
角は外側の固い部分を剥ぎ取り、内側を粉末にすると生薬となる。
〈その他〉
肉質はやや硬いが、食用である。
生え変わったばかりの角は、角化していないので柔らかく、粉末にしやすい上に薬効が強い。
「食べられるけど、なんだか微妙そうだなぁ」
あらかた倒した莉奈は、魔法鞄にしまう前に、一応【鑑定】して視た。
しかし、どちらも食べられると表記されたものの、ロックバードみたいに絶品表記はなかった。
マルガイラに至っては、食べられる部分があまりなさそうである。
なら、日干しにしてスープとか、出汁に使った方が良さそうだ。
「ちなみに"生薬"って何だろう?」
生薬と表記されているが、なんとなく漢方みたいなモノだとは知っているだけで、詳しくは知らない。
最後の1体を魔法鞄にしまう前に、莉奈はジャッカルンロープを詳しく【検索】して視た。
【生薬】
強精強壮、筋力向上、寒気改善、消腫作用、頻尿改善、鎮痛作用、尿漏改善、血行改善、冷感改善、皮膚再生、止血作用、耳鳴改善、聴力改善、帯下改善、消炎作用などの効果に多少期待が出来る。
マナやエナの葉、魔法水やポーション、エーテルなどと調合すると効果あり。
「は?」
……こわい怖いコワイ!!
何この効能の数!!
軽い気持ちで【検索】して視たら、驚くほどズラリと効能が表記されたではないか。想定外な効果があり過ぎて、莉奈はドン引きする。
「食えないのか?」
美味しく食べられるなら、莉奈はこんな顔をしていないだろう。
あまり嬉しそうじゃない莉奈に、エギエディルス皇子が訊く。
「食べられるけど……」
「けど?」
「なんか効能がスゴい?」
肉はともかく角に、ものスゴい効能がある事を簡単に説明する。
「マジかよ」
軽い気持ちで訊いたエギエディルス皇子も、唖然としていた。
魔物の肉ですら最近まで食べなかったのに、角を粉末にして飲むなんて、考える訳がない。しかも、角にそんな効果があるのには驚きだ。
「今はほとんど見かけない鹿の角にも、そんな効能があると聞いた事がある。魔物も同じなんだろう」
エギエディルス皇子に遅れて来たフェリクス王が、辺りを確認しながらそう言っていた。
「なる……ほど?」
でもコレ、ウサギの魔物ですよね? と莉奈は思わず口から漏れそうだったが、魔物にそんな常識は関係ないのだろう。
角の効能に興味のない莉奈は、すぐに肉に思いを馳せた。
焼き肉、串焼き、炒め物……
「まずはクリーム煮かな」
色々な料理は浮かぶけど、ここはやっぱりクリームシチューっぽい感じがイイ気がする。
「魔物を倒してすぐに、よく調理法なんか考えられるわよね」
あれだけの戦闘をした後なのに、息切れ一つしていない莉奈に、アーシェスは驚きを通り越して感服していた。
「玉ねぎやキノコ類をバターで炒めて、その上に軽く焼いたこのウサギの魔物肉をのせて〜、んでベシャメルソース、たっぷりのチーズ〜。オーブンでこんがり焼き目を付けたら……すっごく美味しそう」
「「「……」」」
莉奈が作ろうとしている料理名は、まったく分からない。
だが、その簡単な説明で、美味しいだろうと想像出来るのだから、不思議だ。皆は先程までの戦いより、その料理に思いを馳せていた。
「シチュー系だから……フェリクスさんは白ワイン、エドはレモンソーダかな」
熱々のウサギ肉のクリーム焼きには、キンキンに冷えたワインかビールが合いそうだ。
お酒の飲めない莉奈とエギエディルス皇子は、レモンソーダ。
マルガイラは日干しにするか塩漬けにでもして、スープにしようかなと莉奈はレシピを考えていた。
「白ワイン」
「レモンソーダ」
「シチュー」
莉奈といるとお腹が減るなと思う、皆なのであった。




