574 絶賛!! 焼き肉パーティ開催中
——焼き肉の魔力……いや、魅力に勝てなかったランデル達は、結果的に味見だけでは止められず、焼き肉パーティに参加する事となった。
参加費用として、ランデル達はお金を払ってくれたけど……金貨を通り越して、小判形の白金貨をくれたのには驚きである。
白金貨といえば、10万。
この肉は、竜達が獲って来て解体したのは軍部の人。莉奈はそれを食べやすくしただけ。どう考えても10万は多い。
さすがに莉奈は返そうとしたのだが、ランデル達には当然の対価だと返金に応じなかったので、ありがたく貰う事にした。
ここだけの話、初めて見る白金貨に、ちょっとテンションが上がったのは内緒である。
莉奈はお金を集めるコレクターの気分が、何となく分かった今日この頃だった。
「「「うんまーーっ!!」」」
「魔物を食べたら魔物になるとか、色々言われてるけど……ヤバいぐらい旨い!!」
「んんっ! てっきり臭いし固いと想像してたのに、コレすっごく柔らかいし、肉汁が美味しい」
「あぁぁ〜っ。この肉汁シミシミのご飯って、どうしてこんなに旨いかなぁ」
「魔物を食べると魔物になるとか、野蛮だ! とか……誰だよ言ってんの」
「なぁ? そういうのは食ってから言えつーの」
「ヤバいよ。この焼きすき? ユショウ・ソイと生卵のコラボ、アホみたいに美味しいんですけど〜」
「「分かる!!」」
「そこに、ネギ塩を入れると」
「「死ぬほどウマイ!!」」
ランデル達も、莉奈の勧める食べ方を真似して食べていた。
何の魔物かどこの部位かまったく分からないが、噛む必要がないほどの柔らかい肉。
その肉の脂がまた、ほんのり甘くてくどくない。ちょっと濃い醤油ダレが、さらにキュッと味を引き締めている。
そこに優しい笑顔を浮かべた生卵様の襲来だ。私も混ぜてと言わんばかりに来るではないか。
ならばと、甘辛い醤油ダレを纏った温かいお肉様に、生卵様をくぐらせれば、生卵がまるでシースルードレスを羽織った様で、より一層魅力的に。
あぁ、誘われるままその肉を口に運んでもイイ。
しかし、ここで満を持して白飯様のご登場である。
一粒一粒がピンと立ち、艶っつやホカホカの温かいご飯。その魅惑のクッションに、ドレスアップした肉をふわりと優雅に座らせ、ガッと一緒に勢いよくかっ込めば……。
———ゴーン、ゴーン。
「「「あぁ、幸せぇぇぇ〜っ!!」」」
ランデル達に、祝福の女神様ご降臨である。
ご飯好きには堪らない至福の時が、口いっぱいに広がるのであった。
「……足りなかったら言って下さいね?」
ランデル達のものスゴい笑顔に、莉奈はつい笑ってしまった。
夕食を食べたと言っていた気がするんだけど、ランデル達の食欲は驚くほどに旺盛だ。売るほど持って来て正解だなと思う。
こんなに喜んでもらえるなら、手間暇掛けて準備した甲斐があるというものである。
「肉の旨みが強いのは上カルビ。脂の旨みを楽しみたいなら極上……迷いますね」
「両方楽しめる特上が、案外贅沢なのかしら? でも、魔物って……こんなに美味しかったのね。苦労して討伐しても、素材だけで廃棄し続けていたなんてもったいない」
「瘴気は悪いモノ。そして、その瘴気に感化された魔物を食べるのは良くない。そう言われ続けてきましたからね。仕方がないですよ。そもそも、倒しても持って帰る手段が……」
「そうよねぇ。魔法鞄の所持者なんて少ない上に、容量には限りがあるし、金になる素材か肉かなんて比べるまでもないわ」
ローレン補佐官とアーシェスの会話を聞いて、なるほどなと莉奈は思う。
魔物を討伐出来る者は限られている。
命を危険に晒して魔物と対峙するのだから、対価は大きい方がイイ。となれば、売れない肉より、高額取引される素材を持ち帰るのは必然なのだろう。
思い込みや偏見は、どの世界にもあるものだ。
日本でも、今は好まれているマグロの大トロだって、昔は脂が多いという理由だけで、廃棄処分されていたと聞いた事がある。
食用で持ち込まれたハズのウシガエルやアメリカザリガニは、池や田畑で見かける事はあっても、莉奈ですら好んで捕食しない。
この世界で魔物肉に需要が増えたとして、素材の方が儲かるなら、やっぱり素材しか持ち帰らないだろう。まして、魔物より手軽で美味しいモノが増えたら、やっぱりザリガニみたいに食べなくなる気がする。
となれば、結果的に魔物殲滅は人の力だけはなく、瘴気次第の様な気がしてきた。
まぁ、とりあえず美味しく頂ける内は、食べて食べて食べまくって、頭数を減らした方がイイと思う莉奈なのであった。
「ねぇ。リナ、もう店出しなさいよ。絶対流行るから。店が面倒なら、監修とかレシピ本出すとか色々手はあるし」
そんな事を考えながら、魔物肉を焼いて食べていれば、アーシェスがそう言ってきた。
あれほど魔物の肉に抵抗感があったアーシェスも、ひと口食べてしまえば、その美味しさにハマっている様だった。
ロックバードくらいは食べた事があるハズだから、そもそもあってない様な抵抗だったのかもしれないけど。
「そうなったら、金の匂いを嗅ぎつけた連中が寄るでしょうね」
とローレン補佐官が苦笑いしていれば、フェリクス王がそれに付け加える。
「アーシェスみたいのな」
「失礼ね」
確かに、もの珍しさもあり、しばらくは流行りそうな気がする。
だけど、監修するにしても、レシピ本出すにしても、何だか面倒くさそうだ。
そういうのは、真面目な人に任せればイイと、莉奈は特上カルビをパクリと口に放り込むのであった。
◇◇◇
「あぁ、食った食ったぁ」
「こんなに美味しいご飯、初めてなんだけど」
「「ホントそれ」」
「「「リナさん。ありがとう!!」」」
ただ単に焼いた肉は食べた事はあっても、こんな楽しい焼き肉パーティは初めてだった。
しかも、それが今までで一番美味しかった。見た事のない肉や故郷と同じご飯。それを、これでもかというくらいに食べたランデル達は、超が付く程ご満悦。
もう食えないとばかりに、満足そうにしてお腹を摩っていた。
「苦しい」
「エドもいっぱい食べたよね」
エギエディルス皇子は、腹が破裂しそうなくらいに苦しいと、唸っている。
テーブルの上を片付けていた莉奈は、エギエディルス皇子の様子に笑っていた。
自分で焼いて食べる肉が、楽しくて美味しくて、つい食べ過ぎてしまったらしい。きゅうと空気が萎んだ様な音が、何だか聞こえそうであった。
「ダメだ。俺はもう寝る」
眠いやら苦しいやらで、フラフラとエギエディルス皇子は、聖木の近くに歩いて行った。
どうやら、一番安全な聖木に寄りかかり休むみたいだ。
「あ、エド。地面にそのまま寝ないで」
「あ゛?」
魔法鞄からブランケットを取り出していたエギエディルス皇子に、莉奈は慌てて声を掛けた。
だって、ゴツゴツした地面に腰を下ろして寝るなんて、絶対に身体が痛くなる。
明日も歩くのだから、幼いエギエディルス皇子をゆっくり休ませたいなと思ったのだ。
「この上で寝なよ」
莉奈は魔法鞄から、とあるモノをドカンと取り出した。
「「「……」」」
莉奈の取り出したモノに、エギエディルス皇子だけでなく皆唖然である。
———ぶふっ!
それを見たランデルは、思わず飲んでいた水を口から吹き出していた。
食後の楽しいまったりタイムは、すぐに終わりを告げたのであった。




