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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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516 地獄の終わりが見えてきた



「果てしないとはこの事じゃない?」

「減ってる気がしない」

「終わる気配もしない」

 自分達がレシピを教えて欲しいと願った以上、やらねばならない。

 料理人達はザル係とフキン係に分かれたり、昼食の準備の人と交代制にした様だ。ずっと濾す作業だけでは疲労感が半端ないしね。



「あ、濾した後に残る絞りカスも、寸胴か何かに入れて取っといて」

 一生懸命に濾している皆を見て、莉奈は慌てて言った。

 絞りカスはカスだけど、まだ使い道がある。捨てられたらもったいないと、莉奈は慌てたのだ。

「え? ゴミじゃないの?」

「絞った残りカスだよ?」

 まさに捨てようとしていた料理人達は、ビックリした表情で手を止めていた。

 野菜エキスを絞り取った後のコレを、まだ何かに利用するとは思わなかったのだ。だが、鶏の骨さえ出汁に使う莉奈だったと、皆は思い出していた。



「それを使ってカレーを作っても美味しいし……あ、そうだ!! ついでだから、その絞りカスを使った"トマトソース"と"ケチャップ"も作っちゃおうか」

「「「トマトソース?」」」

「「「ケチャップ??」」」

 何がどうついでだかも、ケチャップが何かも皆には分からないのだ。

 ただ、新作の料理は嬉しい。でも今はソース作りで大変だから、簡単ならイイなと願うばかりだった。

「トマトソースは、ピザの時に作ったソースの別バージョンだよ」

 ピザの時に生地に塗ったソースとは、また違った味わいのソースだ。

 基本はあるけど、アレンジもたくさんあるので、レシピに終わりはない。

 だが、やっとこれで調味料に醤油、マヨネーズ、ケチャップ、ソースが揃うし、かなりのバリエーションの料理が出来るだろう。後は味噌だよね。

 味噌の生る木とか実はないのかな。ウクスナに行くのなら、カカオ豆ことカカ王なんかより、味噌がある事を祈ろう。

 莉奈の記憶が確かなら、以前カカ王を【鑑定】した時、カカ王の種類の名にウクスナの名はなかった気がした。なら、カカ王はウクスナにはない……ハズ。

 カカ王より味噌だ味噌を探そう。

 莉奈はシュゼル皇子の厳命を無視する事にした。



「なるほど?」

「なら、そんなに人数は必要ないな」

 ソース作りに参加していたリック料理長と、マテウス副料理長が頷いていた。

 莉奈の簡単な説明だけで、工程の想定が出来るのだからスゴい人達だ。ある程度ソース作りを見たら、リック料理長自らケチャップ作りに参加してくれるとの事だった。



 と言う事で、皆が大鍋の中の野菜類を濾している間、莉奈は出張に持って行く料理を作ったり、下拵えをする事にした。

 出来た物をその場で出してもイイけど、それだとつまらないよね。現地で作った方が美味しい料理もあるだろうし、料理以外の準備も色々したい。

 他国に行くのはちょっと不安だったけど、1人じゃない。莉奈は修学旅行の前日の様なワクワク感を、やっと感じ始めていた。

 まぁ、旅行の準備に料理は変だけど。



 莉奈が旅行……もとい、出張に持って行く料理を作ったり下準備をしていると、疲れた様な声がした。

「リナ〜濾し終わったよ〜」

 大鍋に大量にあった野菜類が、空っぽになっていた。

 寸胴鍋には、絞り汁と絞りカスが綺麗に分けられていた。それらを必死にやっていた料理人達は、疲労気味でヘロヘロの様だった。

 でも、そのおかげで絞りカスはペースト状までになっている。これを自力でやったのだから尊敬するよ。

 やっぱりミキサーとかフードプロセッサーは偉大だよね。何でも手作業はキツイなと莉奈は改めて思ったのだった。



「で、これがソースかい?」

「そうだね。ここに塩を足して少し煮詰めれば"ウスターソース"。塩は足さないで、コレをそのまま、量を半分以下くらいまで煮詰めてトロッとさせると"中濃ソース"の出来上がりだよ」

「ここからさらに2種類のソースになるのか!!」

 コレで終わりでなく工程が少し増える事で、また一つソースの種類が増える事にリック料理長達は驚愕していた。

 マヨネーズの時のタルタルソースみたいにコレも、バリエーションがあるのかと感服するのだった。




「ソースの味見がしたいなら、キャベツとか……もう、ついでにカツも揚げちゃえば?」

「「「よし、カツだーーっ!!」」」

 味見と聞いた途端、疲れていた料理人達が元気になっていた。

 美味しい物は疲れた心も体も元気にするって事かな?





 ーージュワ。





 パン粉という名の衣を纏った食材達が、油という名のプールにダイナミックに飛び込む様は実に堪らない。

 ブクブク、ジュワジュワ、チリチリと耳に心地良い音響。

 楽器の音とは違ったメロディーが、皆の心とお腹に響いていた。




 味見用のカツは、肉や魚類だけでなく、野菜も揚げている様だった。

 とりあえずなのだから、ちょっとで良くないかなと莉奈は思ったのだが、皆が嬉しそうなので黙っていた。

 食べろと強制している訳ではないからね。

 しかし、食事よりつまみ食いの方が、断然美味しく感じるのは何故だろう。莉奈はカツが揚がる様子を見て、タルタルソースも用意する事にした。



「タルタルソースなんかどうするんだ?」

 莉奈が冷蔵庫から取り出したタルタルソースを見て、リック料理長が何に使うのか訊いてきた。

「好みはあるけどエビフライとか、タルタルソースの上にこのソースを少しかけて食べるのも美味しいよ?」

「「「マジか!」」」

 莉奈が違った食べ方の提案を出せば、料理人達はさらに活気づいていた。

 色々ある調味料は、混ぜても楽しい。

「これから作るケチャップも、マヨネーズと混ぜたら"オーロラソース"になるし、調味料は色々あった方がバリエーションが増えて面白楽しいと思う」

「「「オーロラソース」」」

「ちなみに今言ったのは、私の国の簡単レシピ。本来のオーロラソースは、ホワイトソースにトマトピューレやバターを混ぜて作るのが正式な作り方。他の料理と一緒で、名前は同じでも作り方は色々あるんだよ?」

「「「カクテルと同じか」」」

「だね〜」

 莉奈は頷きつつ、笑っていた。

 何故そこですぐ、お酒が出てくるのだろう。ベクトルの方向がいつもお酒に向かうよね? この人達。



「カツが揚がったよ〜!!」

 ソースの話をしていたら、カツが揚がったみたいだ。

 さぁ、皆が必死に作った手作りソースで、カツの味見といこうか!!







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